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経理データは営業やマーケティングにどう活かせる?

12 分前
読了時間: 14分
経理データは営業やマーケティングにどう活かせる?

経理データは、営業やマーケティングの判断にも活かせます。見るべきなのは売上高だけではありません。サービス別の利益、顧客ごとの契約単価、受注経路ごとの採算、担当者や部門の生産性まで整理すると、「何を売るか」「誰に提案するか」「どこへ予算を使うか」を数字で考えやすくなります。


ただし、会計ソフトに数字が入っているだけでは、営業判断に使える状態とはいえません。取引先名や売上科目の付け方がそろっていなかったり、人件費や外注費をサービス別に分けていなかったりすると、売上は見えても利益が見えないためです。


この記事では、中小企業が経理データを営業やマーケティングに活かす方法を、具体例と手順に沿ってわかりやすく解説します。自動化・外注できる作業と、社内に残すべき判断も分けて整理します。


経理データを営業やマーケティングに活かすとは?


経理データを営業やマーケティングに活かすとは、会計処理の結果を見て終わるのではなく、次の営業活動や予算配分を決める材料として使うことです。


たとえば、月間売上が同じ100万円のサービスでも、提供に必要な外注費や人件費、問い合わせを獲得するための広告費が異なれば、会社に残る利益は変わります。売上だけを見て「よく売れている」と判断すると、忙しいのに利益が増えない商品へ営業人員や広告費を集中させることになりかねません。


経理データを使うと、次のような判断がしやすくなります。


  • 利益が残りやすいサービスを営業の重点商品にする

  • 契約単価が低い顧客層に、追加提案や価格改定を行う

  • 受注につながっていても採算の合わない広告を見直す

  • 売上は高いが工数も多い業務について、提供方法を改善する

  • 回収まで時間がかかる顧客やサービスの契約条件を見直す


経済産業省の「ローカルベンチマーク」でも、売上増加率、営業利益率、労働生産性などの財務指標と、商流・業務フローなどの非財務情報を組み合わせて経営を確認する考え方が示されています。売上、利益、業務の流れを別々に見るのではなく、つなげて考えることが大切です。


営業判断に使いやすい4つの経理データ


すべての数字を細かく分析する必要はありません。まずは、売上と利益の違いがわかり、次の行動につながりやすい4つの指標から始めると運用しやすくなります。


1.サービス別の売上と利益


最初に確認したいのは、サービス別の売上と利益です。売上だけでなく、その売上をつくるために直接発生した外注費、仕入、人件費、決済手数料などを対応させます。


たとえば、Aサービスは月間売上300万円、Bサービスは月間売上200万円だったとします。売上だけならAサービスを伸ばすべきに見えます。しかし、Aサービスの提供原価が240万円、Bサービスの提供原価が100万円なら、売上から直接費を差し引いた利益はAが60万円、Bが100万円です。


この場合、単純にAサービスの受注件数を増やすより、Bサービスの提案機会を増やした方が、少ない売上でも利益を確保できる可能性があります。Aサービスについては、価格を上げる、作業手順を見直す、外注条件を見直すなどの改善が必要です。


2.顧客ごとの契約単価と採算


顧客別の売上を確認すると、売上への貢献度はわかります。ただし、営業判断には顧客ごとの対応工数や値引き、個別対応の費用も必要です。


契約単価が高い顧客でも、毎月の修正依頼が多く、担当者の作業時間が大きい場合は、想定ほど利益が残っていないことがあります。反対に、契約単価がそれほど高くなくても、業務が標準化され、継続率が高く、入金も安定している顧客は、長期的な採算が良い場合があります。


顧客を単価だけで順位付けするのではなく、「売上」「直接費」「対応時間」「継続期間」「入金状況」を合わせて確認すると、自社が増やしたい顧客像が具体的になります。


3.受注経路ごとの売上と利益


問い合わせの入口が複数ある会社では、紹介、Webサイト、広告、展示会、営業電話など、受注経路ごとに数字を分けます。


マーケティングでは問い合わせ数や受注件数だけを見がちですが、経理データを組み合わせると、受注後にどれだけ利益が残ったかまで確認できます。広告から10件受注しても、値引きが多く短期間で解約している場合は、紹介から3件受注した顧客より採算が悪いことがあります。


広告費や制作費だけでなく、営業担当者が商談に使った時間、初期設定や導入支援の工数も含めて考えると、受注経路ごとの実態が見えやすくなります。


4.担当者・部門ごとの生産性


生産性は、単に「従業員1人当たりの売上」を比べるための数字ではありません。投入した時間や人件費に対して、どれだけの粗利益や付加価値を生み出したかを見るために使います。


たとえば、営業担当者ごとの売上だけを比べると、大口案件を担当する人が有利になります。新規受注の粗利益、既存顧客の継続率、値引き率、商談に使った時間なども合わせると、営業活動の質をより公平に確認できます。


2026年版中小企業白書では、厳しい人手不足の中で稼ぐ力を高めるため、労働生産性の向上と経営リテラシーの強化が重視されています。人を減らすための数字ではなく、限られた人員をどこへ配置すれば成果が出やすいかを考えるために使うことが重要です。


どの数字を、どの営業判断に使うのか


経理データは、目的を決めてから見る必要があります。何となく数字を並べるだけでは、会議で確認して終わってしまいます。


確認する数字

わかること

営業・マーケティングでの使い方

注意点

サービス別の売上・利益

どの商品が利益を残しているか

重点商品、提案順、価格、提供方法を見直す

共通経費の配賦ルールをそろえる

顧客別の単価・対応工数

どの顧客層と相性がよいか

追加提案、更新条件、狙う顧客像を決める

売上だけで優良顧客と判断しない

受注経路別の利益

どの集客経路が採算に合うか

広告費や営業時間の配分を変える

受注前後の費用と継続期間も見る

粗利益・労働時間

人員配置と業務効率

営業体制、外注、標準化を検討する

個人評価だけに使わない

売掛金・入金日数

売上が現金になるまでの期間

支払条件、前受金、回収方法を見直す

売上の大きさと資金繰りを分けて見る


最初から完璧な管理会計をつくる必要はありません。自社の意思決定に必要な数字を1つか2つ選び、毎月同じ条件で比較できるようにする方が実務では続きます。


改善前と改善後では、営業会議がどう変わる?


経理データを使っていない営業会議では、「問い合わせが増えた」「今月は大口案件が取れた」「忙しいので人を増やしたい」といった報告が中心になりやすくなります。状況はわかっても、利益や資金繰りへの影響が見えないため、次の打ち手を決めにくい状態です。


経理データを加えると、次のように会話を変えられます。


改善前の見方

改善後の見方

次に決められること

Aサービスの売上が20%増えた

売上は20%増えたが、外注費増加で利益率は低下した

価格改定、外注条件、業務範囲を見直す

広告から問い合わせが30件来た

受注5件のうち3件が短期解約し、獲得費を回収できていない

広告訴求と対象顧客を見直す

B社は月額100万円の大口顧客

個別対応が多く、担当工数を含めると利益率が低い

契約範囲、追加料金、対応手順を見直す

営業担当が忙しい

見積作成と既存顧客対応に時間が偏っている

定型作業を自動化し、提案時間を確保する


たとえば、広告経由の顧客は受注単価が高く、紹介経由の顧客は継続率が高いとわかったとします。この場合、「広告を止める」「紹介だけにする」とすぐ決めるのではなく、広告経由の顧客が継続しにくい理由を確認します。広告の訴求と実際のサービスに差があるのか、契約前の説明が足りないのか、価格だけを重視する顧客が集まっているのかによって、対策は変わります。


数字は答えそのものではなく、確認すべき場所を見つけるための手がかりです。


経理データを営業判断につなげる5つの流れ


経理データを営業判断につなげる5つの流れ

経理データを営業やマーケティングで使うまでの流れは、「集める」「そろえる」「比べる」「判断する」「検証する」の5段階です。


1.集める


会計ソフト、請求書発行システム、販売管理、顧客管理、勤怠、広告管理などから必要なデータを集めます。最初からすべてを統合する必要はありません。サービス別の採算を見るなら、売上、直接費、主な作業時間から始められます。


会計データには金額の信頼性という強みがありますが、問い合わせ経路、商談回数、失注理由などは通常含まれません。営業やマーケティングの情報とつなぐため、顧客コードや案件名を共通にしておくことが重要です。


2.そろえる


同じサービスが「コンサル」「支援料」「月額サポート」など複数の名称で登録されていると、正しく集計できません。サービス区分、顧客名、部門、担当者、受注経路の付け方を決めます。


細かく分けすぎると入力負担が増えるため、実際に判断へ使う単位に絞ります。月次で見直せる数に抑え、例外が出たときの処理も決めておくと集計が安定します。


3.比べる


前月だけでなく、前年同月、直近3か月の平均、予算、サービス間、顧客層間で比較します。単月は大口案件や請求時期の影響を受けるため、複数月で見ることが大切です。


中小機構の「経営自己診断システム」では、財務情報から収益性、効率性、生産性、安全性、成長性を同業他社と比較できます。社内のサービス別比較と、会社全体の同業比較を分けて使うと、自社内の改善点と市場での位置づけを整理しやすくなります。


4.判断する


数字を確認したら、次の行動と担当者を決めます。価格を変えるのか、広告予算を動かすのか、提案対象を変えるのか、業務を標準化するのかを具体的にします。


一度に複数の施策を変えると、どの施策が結果につながったのかわからなくなります。まずは1つの仮説を決め、一定期間試す方法が現実的です。


5.検証する


施策を実施した翌月以降に、同じ条件で数字を確認します。価格改定なら受注率と利益率、広告変更なら問い合わせ数と受注後の利益、業務改善なら作業時間と粗利益を見ます。


改善しなかった場合も失敗で終わらせず、仮説や対象の選び方を見直します。数字の定義を途中で変えた場合は、過去との比較ができなくなるため、変更日と理由を残しておきます。


どこまで自動化・外注できる?


経理データの活用では、数字を集めて整える作業と、その数字を見て決める仕事を分けることが大切です。


口座・カード明細の取得、請求データの連携、仕訳候補の作成、サービス別・顧客別の集計、定型レポートの作成などは、自動化や外注を検討できます。毎月同じ手順で行う作業ほど切り出しやすくなります。


一方、次の判断は社内に残ります。


  • どの顧客層を増やしたいか

  • 価格や値引き条件をどうするか

  • どの商品を重点的に売るか

  • 広告費や営業人員をどこへ配分するか

  • 採算が悪い顧客との契約をどう見直すか

  • 数字に表れない顧客満足や将来性をどう評価するか


経理代行に依頼する場合も、「集計表をつくってもらう」だけでは活用が進まないことがあります。毎月どの数字を、いつまでに、どの単位で確認するかを決め、社内の営業会議や経営会議で使える形にする必要があります。


経営全体で確認すべき指標は、関連記事「経営の見える化とは?経理データで何を確認すべき?」でも整理しています。月次の数字が遅れている会社は「月次試算表が遅いと、融資で不利になる?」もあわせてご確認ください。


導入時に決めておきたい役割分担


経理、営業、マーケティングで数字の意味がずれると、会議のたびに集計し直すことになります。最低限、次の役割を決めておきましょう。


役割

主な担当

決める内容

データ入力・連携

経理、担当部署、外部支援先

顧客・サービス・部門・受注経路の登録方法

数字の確認

経理責任者、営業責任者

売上、費用、工数、入金の漏れや異常値

分析資料の作成

経理、経営企画、外部支援先

比較期間、指標、締め日、提出日

営業判断

社長、営業責任者

価格、重点商品、対象顧客、人員配置

施策の実行

営業、マーケティング

提案内容、広告、フォロー方法

効果検証

社長、各責任者

施策前後の利益、受注率、継続率、工数


中小企業では、同じ人が複数の役割を担っても問題ありません。大切なのは、集計する人だけに判断まで任せず、経営者や営業責任者が数字の意味を確認することです。


よくある失敗と注意点


売上だけで優先順位を決める


売上の大きいサービスや顧客が、利益も大きいとは限りません。直接費、対応工数、値引き、回収までの期間を確認します。


費用の分け方を細かくしすぎる


正確さを求めてすべての費用を案件別に分けようとすると、入力作業が増え、運用が止まりやすくなります。判断に影響する金額の大きい費用から分け、共通経費はわかりやすいルールで配賦します。


数字を個人評価だけに使う


担当者別の数字は、顧客層や担当エリア、既存顧客の引継ぎ状況などに左右されます。売上だけで評価すると、短期的な受注や値引きを優先する行動につながることがあります。個人を責める材料ではなく、営業プロセスや人員配置を改善する材料として使います。


集計したまま行動を決めない


レポートを作成しても、次の行動、担当者、期限が決まらなければ成果につながりません。営業会議では、数字の確認に時間を使いすぎず、「何を変えるか」まで決めます。


会計データだけで顧客を判断する


将来の成長性、紹介の可能性、実績としての価値、顧客との関係など、会計データに表れない要素もあります。数字で候補を絞り、最終判断は現場情報と合わせて行います。


経理データ活用のチェックリスト


次の項目に「はい」と答えられるか確認してみてください。


  • サービス別の売上と主な直接費を分けている

  • 顧客名やサービス名の登録ルールが統一されている

  • 顧客ごとの契約単価と対応工数を確認できる

  • 問い合わせ・受注経路を記録している

  • 広告費だけでなく受注後の利益も確認している

  • 月次の数字が営業会議に間に合う

  • 同じ指標を前月、前年同月、予算と比較できる

  • 数字を見た後に、担当者と期限を決めている

  • 自動化・外注する作業と社内で判断する内容を分けている

  • 指標や集計ルールを変更した履歴を残している


すべてを一度に整える必要はありません。まずは「どのサービスが利益を残しているか」を毎月確認できる状態をつくり、その後に顧客別、受注経路別へ広げると進めやすくなります。


よくある質問


Q.会計ソフトだけで営業分析はできますか?


売上や費用の確認はできますが、問い合わせ経路、商談状況、失注理由、対応時間などは会計ソフトだけでは把握しにくいことがあります。顧客管理、販売管理、勤怠などの情報と共通の顧客コードや案件名でつなぐと分析しやすくなります。


Q.何か月分のデータがあれば分析できますか?


まずは直近3か月でも傾向を確認できます。ただし、季節変動や大口案件の影響を受ける業種では、前年同月を含む12か月以上の比較があると判断しやすくなります。データが少ない場合は、結論を急がず仮説として扱います。


Q.サービス別に人件費を正確に分けられません


最初から分単位で集計する必要はありません。担当者が1週間または1か月の作業時間を大まかに記録し、比率で配賦する方法があります。重要なのは、毎月同じルールで比較できることです。判断への影響が大きくなった段階で精度を上げます。


Q.利益率が低いサービスはやめるべきですか?


すぐに廃止するとは限りません。新規顧客の入口になっている、別サービスの受注につながる、将来の成長が見込めるなどの役割がある場合があります。値上げ、業務の標準化、提供範囲の見直し、上位サービスへの導線づくりを検討してから判断します。


Q.経理代行へ依頼すれば、営業判断まで任せられますか?


データ整理、月次集計、資料作成などは依頼できる場合がありますが、価格、対象顧客、広告予算、契約条件などの最終判断は会社側が行います。どこまで支援を受けられるかは、契約前に確認が必要です。


経理データを、次の売上と利益につなげるために


経理データは、過去を記録するためだけのものではありません。サービス別利益、契約単価、受注経路別の採算、生産性を確認すると、営業やマーケティングの優先順位を数字で考えられるようになります。


大切なのは、細かな分析表を増やすことではなく、自社が毎月判断したいことを決め、必要なデータを同じルールでそろえることです。集計や定型レポートは自動化・外注し、価格や対象顧客、予算配分などの判断は社内で行います。


品川・横浜 経理代行ステーションでは、日常の経理業務だけでなく、月次の数字を経営判断に使いやすい形へ整えるためのご相談にも対応しています。経理データはあるものの、サービス別の利益が見えない、営業会議で使える資料になっていない、社内で集計する時間が取れないといったお悩みがある場合は、無料相談をご利用ください。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。実際の集計方法、会計処理、税務上の取扱い、外注できる業務範囲は、会社の状況や契約内容により異なります。個別の判断については、税理士などの専門家へご確認ください。

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