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経理が1人しかいない会社は、退職リスクにどう備えるべき?

2 日前
読了時間: 10分
経理が1人しかいない会社は、退職リスクにどう備えるべき?

 

経理が1人しかいない会社でも、担当者が休める体制はつくれます。最初に整えたいのは、支払いと給与の期限、資料の置き場所、代わりに確認できる人の3つです。経理の仕事を全員が覚える必要はありません。止まると困る業務から、もう1人が手順をたどれる状態にします。

 

「今の担当者に長く働いてほしい」という気持ちと、担当者が不在でも会社が回る準備は両立します。休暇中にも電話が鳴る状態を減らせれば、本人の負担も軽くなります。退職が決まってから急いで手順書を作るより、普段の仕事の中で少しずつ残す方が、説明する側にも無理がありません。

 

この記事では、退職後の緊急対応ではなく、一人経理を続けながら備える方法を取り上げます。社長と担当者が月に一度確認できる業務表や、代わりの人が実際に操作する練習まで、順番に整理します。

 

最初の確認は「明日休んだら、何が止まるか」

 

業務の一覧を作るときは、「経理全般」「月次処理」のような大きなくくりにせず、毎月の予定表を開きます。取引先への支払い、給与データの作成、請求書発行、入金確認、税理士への資料提出。それぞれの締切と、遅れたときの影響を書き出してください。

 

たとえば、振込データを作る日が25日、社長が承認する日が27日、支払日が月末なら、この3日を区別します。支払日だけを共有しても、社長が気づいた時点で作成作業が間に合わないことがあります。銀行の受付時刻や休日の扱いは、利用する金融機関の条件で確認します。

 

次に、担当者しか知らない情報を探します。請求書が個人宛てのメールに届く、会計ソフトの管理者が本人だけ、給与の変更情報が口頭で渡される、といった状態です。仕事の難しさよりも、他の人が資料にたどり着けないことが代行を難しくする場合があります。

 

確認の場では、「仕事を全部説明してください」と頼むより、「次の支払いで使う資料を一緒に見せてください」とお願いすると具体化しやすくなります。作業の現物を見ながら、受け取る人、保存場所、入力先、承認者を追っていきます。

 

業務表には、代わりの人が動ける情報を残す

 

一覧には、業務名、作業日、締切、資料の場所、担当者、確認者を入れます。最初からすべての処理を細かく書くと更新が負担になるため、日程と入口を1枚にまとめ、詳しい操作は別の手順書に分けます。

 

業務

最低限残したい情報

取引先への支払い

支払一覧の場所、作成日、承認者

給与計算

勤怠の締日、変更情報、確認先

請求書発行

請求対象、単価の根拠、送付先

入金確認

口座、請求一覧、差額の連絡先

月次の記帳

資料の提出先、未確認取引の一覧

税理士への連絡

担当窓口、提出日、質問事項

 

この表の「確認者」は、作業を横で見た人という意味ではありません。支払金額や給与変更を判断できる人を記載します。経理担当者が計算をしていても、従業員の給与条件を決めるのは経営者です。判断の根拠を会社に残すことで、担当者が替わっても同じ条件で処理できます。

 

年に一度の仕事も別欄に残しましょう。決算資料の収集、保険の更新、賞与、年末調整に関する資料の取りまとめなどは、直近1か月の予定表には出てきません。過去1年のカレンダーや送信メールを一緒に確認すると、季節ごとの業務を拾いやすくなります。

 

年末調整や社会保険の手続きは、どの専門家・社内担当が受け持つかも書き添えます。給与の計算作業を外注しただけで、申告や届出のすべてが含まれるとは限りません。既存の税理士・社会保険労務士との分担を、実際の契約に沿って整理します。

 

手順書は、次の担当者が迷うところから作る

 

手順書に必要なのは、画面の操作だけではありません。「いつもの取引先だからこの科目」「この金額なら社長確認」という判断があれば、その条件と確認先を残します。判断に迷ったときの連絡先まで分かると、代わりの人が独断で処理する必要がなくなります。

 

作る順番は、支払い、給与、請求書など締切が動かしにくい仕事を先にします。手順は、資料を受け取る、内容を照合する、入力する、承認を求める、完了を記録する、のまとまりで書くと追いやすくなります。画面の画像は、個人情報や口座情報の見せ方に配慮して使います。

 

特に残したいのは、通常と違う場合です。請求書が届かない、給与条件が変更された、振込先が変わった、同じ請求書が再送された。その際に作業を止めるのか、誰へ尋ねるのかを短く書きます。通常処理だけの手順書より、実際に使える場面が増えます。

 

手順書には作成日だけでなく、最終確認日と更新担当を付けます。ソフトの画面や保存先が変わったとき、古い画像のままでは次の担当者が迷います。毎月全部を書き直す必要はなく、今月変わった箇所だけを確認する運用にします。

 

クラウド化は「誰でも見られる」状態にしない

 

資料をクラウドに置くと、会社以外の場所からも作業を引き継ぎやすくなります。ただし、給与情報や取引先の口座まで全社員に見える設定にする必要はありません。業務に応じて、閲覧・編集・承認の権限を分けます。

 

たとえば、総務担当者は勤怠資料を提出し、経理担当者は給与計算に必要な範囲を確認し、社長は確定金額を承認する、という分担です。共有フォルダも「全社共通」「経理担当」「給与関係」のように閲覧対象を整理します。人が増えたときに都度考えるより、権限表を持つ方が変更しやすくなります。

 

個人用のIDとパスワードを全員で使う方法は避け、会社が管理できるアカウントを用意します。誰が処理したかが分かることに加え、退職や担当変更の際に、その人の権限だけを外せることが利点です。二要素認証の管理方法や、端末をなくした場合の連絡先も確認します。

 

IPAは、中小企業向けの情報セキュリティ対策やクラウド利用の手引きを公開しています。資料の共有方法を見直す際には、アクセス管理やバックアップの確認にも使えます。

 

 

データがクラウドにあることと、会社が必要なデータを取り出せることは別です。会計データや証憑をどの形式で出力できるか、契約終了後も確認できるかを調べます。外注先が管理する環境を利用する場合は、引渡しの方法も契約前に確認しておきましょう。

 

「手順書がある」で終わらず、一度だけ代わりに進める

 

引継ぎの練習は、担当者が休暇を取る直前に始める必要はありません。通常の業務日に、担当者がそばにいる状態で、別の人が手順書に沿って請求書の下書きや支払一覧を作ってみます。実際の送信・振込は、通常の承認手順を経て行います。

 

この練習で見つけたいのは、担当者の説明不足ではなく、資料と手順の間にある空白です。「どのファイルが最新版か分からなかった」「取引先コードが見つからなかった」「承認を求める相手が不在だった」など、止まった箇所を記録します。

 

経理が1人しかいない会社は、退職リスクにどう備えるべき?:業務の分担と確認の流れ

 

練習後は、止まった箇所だけを直します。完成度の高いマニュアルを作るために何週間もかけるより、1つの業務を実際に進められる状態にする方が、担当者不在への備えになります。翌月は別の業務を試すなど、無理のない範囲で広げます。

 

給与のように情報の機密性が高い仕事は、代わりの担当者を限定します。全員ができるようにする必要はありません。社長と外部の支援先だけが確認できる体制でも、担当者本人にしか分からない状態からは改善できます。

 

外注は、担当者の仕事を減らしたい部分から考える

 

一人経理の備えとして外注を使う場合、いきなりすべての業務を移す方法だけではありません。毎月の記帳を外注して、社内担当者は資料の確認と支払いを続ける。給与計算を外注し、勤務実績や変更条件は社内で確定する。こうした分担も検討できます。

 

選ぶ基準は、担当者の時間がどこで使われているかです。入力に時間がかかるのか、資料が届かず催促しているのか、社長の承認を待っているのかで、外注する部分が変わります。資料の催促が主な負担なら、入力だけを依頼しても改善幅は限られます。

 

仮に月の経理作業が40時間あり、記帳と照合が18時間、資料回収が8時間、支払いと給与確認が14時間だとします。記帳と照合を外注しても、18時間すべてが減るとは限りません。質問への回答や成果物の確認が3時間残れば、社内作業は25時間という試算になります。

 

これは説明用の想定例です。実際には、外注先へ渡す資料の状態や業務範囲によって変わります。担当者の残業時間だけでなく、有給休暇中に連絡が発生した回数や、締切前に誰かが代わりに確認できたかも、体制を見直す指標にできます。

 

外注先にも担当者の不在は起こり得ます。主担当だけでなく、代わりの窓口、作業履歴の共有、問い合わせへの回答方法を確認します。「社内の一人依存」が、そのまま外注先の一人依存に変わらないよう、会社としての対応体制を見ておきます。

 

1か月で始めるなら、この順番で

 

初週は、社長と担当者で翌月までの支払い・給与・請求の期限を確認します。担当者の通常業務を止めないよう、30分程度の短い確認を数回に分けても構いません。まず日程と資料の入口が見えれば、次に整える箇所を選べます。

 

2週目は、資料の共有先と権限を整えます。過去のファイルを一度に整理し直すのではなく、次の月次から保存先と命名ルールを統一します。過去分の整理が必要なら、日常処理とは別に作業日を確保します。

 

3週目は、最優先の業務を1つ選び、簡単な手順書を作ります。4週目に別の人が試し、足りない説明を補います。外注を検討している会社は、この段階の業務表を相談に使うと、任せたい仕事と社内に残す仕事を具体的に話せます。

 

費用や準備期間もこの表をもとに確認します。初期設定、過去の未処理分、毎月の通常業務を分けて見積もると、どの準備に費用がかかるかを把握しやすくなります。全部を一度に移すか、段階的に移すかも選びやすくなります。

 

社長から担当者へ、どう伝えればよいか

 

「あなたが辞めても困らないように」という言い方では、担当者が距離を感じるかもしれません。「休みのときに連絡しなくて済むようにしたい」「繁忙期に手伝える仕事を増やしたい」と、今の負担を減らす目的を伝える方が、取り組む理由を共有しやすくなります。

 

手順書づくりを通常業務に上乗せする場合は、その時間も確保します。担当者に任せきりにせず、社長が期限と承認のルールを決め、総務担当者が資料の場所を整理するなど、会社側の仕事として分担してください。

 

担当者から「この仕事は他の人に渡しにくい」と言われたら、理由を聞きます。情報の機密性なのか、取引先ごとの例外なのか、処理を間違えた場合の責任が不安なのか。理由が分かれば、閲覧権限の限定や、確認者の設定などで対応を考えられます。

 

よくある質問

 

経理が分かる社員が他にいなくても始められますか?

 

始められます。最初は会計処理を覚えるより、支払期限、資料の置き場所、取引内容を確認できる人を共有します。専門的な処理は支援先へ依頼し、社内では資料の収集と承認を担う形もあります。

 

税理士に相談すれば、全部引き継いでもらえますか?

 

日々の請求・支払い・給与計算まで対応するかは契約次第です。今の税理士に、対応している業務と追加で依頼できる業務を確認しましょう。経理代行を併用する場合は、税理士へ渡すデータと質問窓口を合わせて決めます。

 

退職の予定がないのに、準備を進めてもよいですか?

 

休暇や急な体調不良への備えにもなるため、普段から進められます。退職予定の有無を聞き出すための取り組みにせず、休める体制づくりとして会社全体で進めると目的が伝わりやすくなります。

 

まずは、次の支払いを他の人が追える状態へ

 

一人経理への備えは、業務一覧を作るだけでは終わりません。資料にたどり着き、手順を進め、判断が必要なところで確認できることまで確かめます。最初の対象は、次の支払いなど、期限が明確な仕事を1つ選べば十分です。

 

退職が近い場合の準備は、経理担当が辞めそうな時、社長は何を準備しておくべき?でも整理しています。

 

品川・横浜 経理代行ステーションでは、日常の経理業務と社内に残す役割を整理しながら、外注できる範囲を相談できます。今の担当者の負担や、代わりの人がいない業務からお聞かせください。

 

 

※作業時間は説明用の想定例です。利用するシステムの権限・銀行の受付条件・専門家の対応範囲は、各サービスや契約の内容に沿って確認してください。

 

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