経理担当が突然辞めたら、まず何から対応すべき?
- 7月9日
- 読了時間: 11分

経理担当者から突然退職を伝えられたり、引き継ぎがないまま出社しなくなったりすると、社長は何から手をつければよいかわからなくなるかもしれません。
しかし、最初からすべての経理業務を元通りにしようとする必要はありません。
まず優先すべきなのは、会社のお金の流れを止めないことです。
経理担当が突然辞めたとき、最初に対応すべきこと
経理担当が突然辞めた場合は、次の順番で対応します。
今後2週間の支払い予定を確認する
給与計算と給与振込の状況を確認する
請求書の発行と入金予定を確認する
ネットバンキングや会計ソフトの権限を確認する
税理士や社会保険労務士などへ連絡する
社内で対応する業務と外注する業務を分ける
経理担当が突然辞めたときに最初に行うべきことは、後任者の採用ではありません。支払い、給与、請求、入金、税金など、期限がある業務を洗い出し、会社のお金の流れを止めない体制をつくることです。
特に、給与や取引先への支払いが数日後に迫っている場合は、採用活動よりも緊急対応を優先します。
経理担当が辞めた当日に確認すること
最初の24時間では、次の項目を確認してください。
確認項目 | 確認する内容 | 緊急度 |
預金残高 | 各銀行口座の現在残高 | 高 |
支払い予定 | 給与、仕入代金、家賃、借入返済、税金など | 高 |
給与計算 | 勤怠集計、給与計算、振込データの作成状況 | 高 |
請求書発行 | 未発行の請求書、請求金額、発行期限 | 高 |
入金予定 | 売掛金の入金日、未入金の取引先 | 高 |
システム | 会計ソフト、給与ソフト、請求書システム | 高 |
銀行権限 | ネットバンキング、振込承認、トークン | 高 |
経理資料 | 通帳、印鑑、請求書、領収書、契約書 | 中 |
外部連携 | 税理士、社労士、銀行などの連絡先 | 中 |
この段階では、帳簿を完璧に仕上げることよりも、いつ、誰に、いくら支払う必要があるのかを把握することが重要です。
1.今後2週間の支払い予定を確認する
最初に、銀行口座の残高と今後の支払い予定を確認します。
経理担当者が管理していた支払いには、次のようなものがあります。
従業員への給与
仕入先や外注先への支払い
事務所や店舗の家賃
借入金やリース料金
クレジットカードの引き落とし
税金や社会保険料
水道光熱費や通信費
銀行の入出金明細、請求書、メール、チャット、会計ソフトなどを確認し、今後2週間の支払いを一覧にします。
支払いは優先順位をつける
すべての支払いを一度に処理できない場合は、次のように優先順位をつけます。
最優先で確認する支払い
従業員の給与
家賃
税金・社会保険料
借入金の返済
事業継続に欠かせない仕入先への支払い
個別に確認する支払い
通常の仕入代金
外注費
リース料金
クレジットカードの利用代金
支払時期を調整できる可能性があるもの
緊急性の低い備品購入
広告費
更新を延期できるサービス
任意の設備投資
支払いを遅らせる場合は、会社だけで判断せず、取引先へ早めに連絡することが大切です。
2.給与計算と給与振込の状況を確認する
給与は従業員の生活に直接関係するため、最優先で確認する業務の一つです。
次の項目を確認してください。
給与の締日と支給日
勤怠情報が集まっているか
残業代や手当の計算が終わっているか
給与計算ソフトにログインできるか
振込データが作成されているか
給与明細を発行できるか
社会保険料や源泉所得税を正しく控除できるか
給与支給日が近いにもかかわらず、社内に給与計算ができる人がいない場合は、税理士、社会保険労務士、給与計算代行会社などへ早めに相談します。
勤怠情報や前月の給与明細、従業員名簿、雇用契約書などが残っていれば、外部の専門家が状況を確認しやすくなります。
3.請求書の発行と入金予定を確認する
支払いだけでなく、会社に入ってくるお金も確認しなければなりません。
経理担当者の退職によって請求書の発行が止まると、売上があっても入金されない状態になります。
次の内容を確認してください。
今月まだ発行していない請求書
請求先と請求金額
請求書の締日と発行日
取引先への送付方法
売掛金の入金予定日
支払期限を過ぎている売掛金
入金確認を行う担当者
請求内容がわからない場合は、営業担当者、契約書、見積書、受注管理システムなどから情報を集めます。
請求書の発行が数週間遅れると、入金もその分遅くなります。資金繰りへの影響を防ぐためにも、請求業務は早めに再開しましょう。
4.ネットバンキングや経理システムの権限を確認する
経理担当者が使っていたシステムにログインできるかを確認します。
確認する主なシステムは次のとおりです。
ネットバンキング
会計ソフト
給与計算ソフト
請求書発行システム
経費精算システム
法人カードの管理画面
クラウドストレージ
経理用のメールアドレス
税理士や社労士との共有システム
特に注意したいのが、二段階認証です。
認証コードの送信先が退職者の個人スマートフォンになっている場合、IDとパスワードがわかっていてもログインできないことがあります。
確認したい権限のポイント
管理者権限を持っている人は誰か
退職者以外の管理者が登録されているか
二段階認証の送信先を変更できるか
振込データの作成者と承認者は誰か
退職者のアカウントを停止しても業務に影響しないか
データのバックアップが残っているか
退職者のアカウントをそのまま使い続けるのではなく、状況を確認したうえで会社管理のアカウントへ切り替えます。
パスワードがわからない場合は、むやみに操作を繰り返さず、システム会社や金融機関のサポート窓口へ相談してください。
5.税金と社会保険料の期限を確認する
経理担当者が辞めても、税金や社会保険料の納付期限は延長されません。
特に確認したいのが、源泉所得税と社会保険料です。
源泉徴収した所得税と復興特別所得税は、原則として給与などを支払った月の翌月10日までに納付します。給与の支給人員が常時10人未満で、納期の特例の承認を受けている場合は、半年分をまとめて納付する制度があります。国税庁は、原則として納付対象月の翌月末日が納付期限です。
法人税や消費税の申告・納付
住民税の特別徴収
労働保険料
固定資産税
償却資産申告
年末調整
法定調書
算定基礎届
労働保険の年度更新
経理担当者しか期限を把握していなかった場合は、顧問税理士や社会保険労務士へ連絡し、今後の手続きを一覧にしてもらいましょう。
6.税理士や社会保険労務士へ連絡する
顧問税理士や社会保険労務士がいる場合は、経理担当者が退職したことを早めに伝えます。
連絡するときは、次の内容をまとめておくとスムーズです。
経理担当者が退職した日
引き継ぎがあったか
現在止まっている業務
給与の支給日
直近の支払予定
税金や社会保険料の納付状況
ログインできないシステム
社内で対応できる人がいるか
外注したい業務
ただし、税理士へ依頼しているからといって、日常の経理業務まですべて対応してもらえるとは限りません。
税理士との契約が決算や税務申告だけの場合、給与計算、請求書発行、売掛金管理、振込などは別途対応が必要です。
現在の契約範囲を確認したうえで、足りない業務については経理代行会社などへの依頼を検討します。
7.社内で行う業務と外注する業務を分ける
突然の退職後に、社長や他の社員だけですべての経理業務を抱えると、本来の業務に影響が出ます。
経営判断が必要な業務は社内に残し、作業部分は外部へ依頼する方法があります。
業務 | 社内で行うこと | 外注を検討できること |
支払い | 支払先・金額の承認 | 振込データの作成、振込処理 |
給与 | 勤怠・手当の最終確認 | 給与計算、明細発行 |
請求 | 請求内容の確定 | 請求書の作成・送付 |
売掛金 | 取引先との判断 | 入金確認、未入金一覧の作成 |
会計 | 経営上の判断 | 記帳、証憑整理、月次処理 |
税務 | 方針や重要事項の確認 | 税務申告、税務相談 |
資金繰り | 投資・借入の判断 | 資金繰り表の作成・更新 |
重要なのは、業務をすべて外注するか、すべて社内で行うかの二択ではありません。
例えば、緊急性の高い給与計算と振込だけを一時的に外注し、落ち着いてから長期的な体制を考えることもできます。
経理担当の突然の退職後にやってはいけないこと
後任者の採用だけを急ぐ
採用活動を始めても、すぐに後任者が見つかるとは限りません。
採用を進めながら、目の前の支払い、給与、請求業務を継続できる暫定体制をつくる必要があります。
経理経験のない社員にすべて任せる
「とりあえず対応しておいて」と他の社員へ丸投げすると、振込金額や給与計算を間違える可能性があります。
社内で対応する場合も、業務範囲を限定し、税理士や経理代行会社に確認できる体制をつくりましょう。
退職者のアカウントを使い続ける
退職者名義のアカウントや個人メールアドレスを使い続けると、権限管理が不明確になります。
データを確認しながら、会社管理のアカウントへ移行してください。
記帳作業から始める
会計ソフトへの入力は大切ですが、数日以内に給与支給や取引先への支払いがある場合は、そちらを優先します。
緊急時は、次の順番で進めるのが基本です。
支払いと給与
請求と入金
税金・社会保険
記帳と月次決算
業務改善とマニュアル作成
経理業務を1週間で立て直す流れ
退職当日
銀行残高を確認する
今後2週間の入出金を一覧にする
給与支給日を確認する
各システムへのログイン状況を確認する
通帳、印鑑、トークンなどを確保する
1~3営業日以内
未処理の支払いを整理する
未発行の請求書を確認する
給与計算の進捗を確認する
税理士や社労士へ連絡する
社内の暫定担当者を決める
外注する業務を決める
4~7営業日以内
支払いと給与の暫定フローをつくる
請求書の発行を再開する
売掛金の入金状況を確認する
会計資料を整理する
経理代行や採用の見積もりを取る
2週間目以降
月次業務の一覧をつくる
年間の税務・労務スケジュールを整理する
権限を会社名義へ切り替える
経理マニュアルを作成する
一人だけに業務が集中しない体制をつくる
経理代行を早めに検討した方がよい会社
次のいずれかに当てはまる場合は、経理代行の利用を早めに検討した方がよいでしょう。
社内に経理経験者がいない
給与支給日が迫っている
ネットバンキングを操作できる人がいない
請求書の発行が止まっている
会計ソフトにログインできない
税理士とのやり取りを退職者しか把握していない
月次決算が数か月遅れている
社長が経理対応に追われている
後任者の採用まで数か月かかりそう
今後も経理を一人に任せることに不安がある
経理代行は、長期間の契約だけでなく、退職後の緊急対応や後任者が決まるまでの一時的な利用ができる場合もあります。
経理担当者の退職に関するよくある質問
Q.経理担当が突然辞めたら、一番最初に何を確認すればよいですか?
最初に確認するのは、銀行口座の残高と今後2週間の支払い予定です。
特に、給与、家賃、仕入代金、借入返済、税金など、支払期限が決まっているものを優先してください。
Q.顧問税理士に連絡すれば、すべて対応してもらえますか?
税理士との契約内容によります。
決算や税務申告だけを依頼している場合、給与計算、請求書発行、売掛金管理、振込などは契約に含まれていないことがあります。まずは対応可能な業務を確認しましょう。
Q.経理代行は一部の業務だけでも依頼できますか?
サービス会社によりますが、給与計算、記帳、請求書発行、入金管理など、必要な業務だけを依頼できる場合があります。
緊急時には、期限が迫っている業務だけを先に依頼し、落ち着いてから依頼範囲を見直す方法もあります。
Q.退職者しかパスワードを知らない場合はどうすればよいですか?
システムの管理者、金融機関、ソフト会社のサポート窓口へ連絡します。
本人の個人アカウントを無理に使用するのではなく、会社の代表者や管理者として、正式な方法でアカウントの復旧や権限変更を進めてください。
Q.退職した経理担当者へ連絡してもよいですか?
退職の経緯や、代理人・退職代行会社が入っているかによって対応が異なります。
代理人などから連絡方法を指定されている場合は、その方法に従います。労務上の問題やトラブルがある場合は、社会保険労務士や弁護士へ確認してください。
Q.新しい経理社員を採用するか、経理代行を利用するか迷っています。
まずは経理代行などを利用して業務を止めない体制をつくり、その後に採用の必要性を判断する方法があります。
日常的な社内対応が多い会社は採用、定型業務が中心で業務量に波がある会社は外注が向いている傾向があります。両方を組み合わせることも可能です。
まとめ|最初に行うのは「会社のお金を止めないための確認」
経理担当が突然辞めたときは、すべての経理業務を一度に立て直そうとする必要はありません。
まずは、次の5点を確認してください。
今後2週間の支払い予定
給与計算と給与振込
請求書の発行と入金予定
銀行・会計システムの権限
税金・社会保険料の期限
そのうえで、社内で行う業務と外部へ依頼する業務を分けます。
横浜・東京 経理代行ステーションでは、記帳代行、給与・賞与計算、請求書発行、売掛金管理、振込代行、資金繰り管理など、会社の状況に応じた経理代行を提供しています。経理業務だけでなく、資金繰り管理や各種手続きを含むバックオフィス業務を支援しています。支払い、給与、請求などが止まりそうな場合は、状況が悪化する前にご相談ください。オンラインでの無料相談にも対応しています。



コメント