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資金繰り表はなぜ必要?中小企業は何か月先まで見るべき?

4 時間前
読了時間: 11分
資金繰り表はなぜ必要?中小企業は何か月先まで見るべき?

 

資金繰り表を作ったほうがよいと聞いても、「預金残高はネットバンキングで確認できる」「毎月の試算表を見ているから十分」と感じる経営者は少なくありません。

しかし、預金残高が示すのは今日のお金で、試算表が中心に示すのはこれまでの売上・費用・利益です。来月以降の入金と支払いを日付に沿って並べ、将来の残高を見通す役割は、資金繰り表が担います。

この記事では、中小企業が資金繰り表を持つ意味、何か月先まで作ればよいか、どの項目を入れるか、社内・外注先でどう分担するかを、初めての方にもわかりやすく説明します。

 

資金繰り表は「6か月先」を基本に考える

中小企業が最初に作るなら、月次で6か月先まで見通せる資金繰り表がおすすめです。最低でも3か月先まで確認し、設備投資、賞与、納税、繁忙期と閑散期の差が大きい会社では、必要に応じて12か月先まで大枠を作ります。

J-Net21(中小企業基盤整備機構)の解説でも、過去の資金繰りをもとに3〜6か月先を予測する方法が紹介されています。ただし、すべての会社に法律上共通する「必ず何か月」という期限があるわけではありません。6か月は、予測の現実性と対策に使える時間のバランスを取りやすい実務上の目安です。

資金不足が近い、入金遅れが起きている、借入返済が重いといった場合は、月次表だけでは粗すぎます。向こう8〜13週間を週単位で管理する表を併用し、直近1か月は日付単位の支払予定まで確認します。

 

資金繰り表は何か月先まで見るかを示す判断図

 

大切なのは、遠い将来まで細かい数字を埋めることではありません。3か月先は請求済み金額や確定した支払額を使って精度を高め、4〜6か月先は受注見込みや固定費から概算し、毎月実績に置き換えます。

 

資金繰り表が必要な3つの理由

 

利益が出ていても、お金が足りなくなることがある

売上を計上した日と、代金が入金される日は同じとは限りません。たとえば、6月に500万円を売り上げても、入金が8月末なら、6月の利益が増えても7月の給与や仕入代金には使えません。

反対に、借入金の元本返済は預金を減らしますが、損益計算書の費用にはなりません。設備を現金で購入した場合も、購入月の支出と会計上の費用計上が一致しないことがあります。このように、利益と現金の動きには時間差があります。

資金繰り表は、会計上の利益ではなく、実際にいつ入金され、いつ支払うかを並べます。そのため、「利益は出ているのに月末の支払いができない」という黒字倒産の危険を早めに把握できます。

 

対策を選べるうちに資金不足へ気づける

資金不足が来週に迫ってからでは、選べる対策が限られます。金融機関への融資相談には資料準備や審査の時間が必要です。支払条件や入金条件の見直しも、取引先との合意なしには進められません。

6か月先まで見ていれば、残高が最低ラインを下回る月を早く発見できます。売掛金の回収を確認する、投資時期をずらす、不要な支出を見直す、金融機関へ早めに相談するなど、複数の選択肢を比較できます。

 

投資してよい金額を判断しやすくなる

資金繰り表は、危機を避けるためだけの資料ではありません。採用、広告、設備、出店といった投資を、手元資金との関係で判断する資料にもなります。

たとえば、現在の預金が2,000万円あっても、2か月後に納税500万円、賞与400万円、借入返済200万円が予定されていれば、自由に使える2,000万円ではありません。投資後も必要な運転資金が残るかを確認してから意思決定できれば、過度に慎重になることも、使いすぎることも減らせます。

 

試算表・預金残高・資金繰り表の役割は異なる

試算表、ネットバンキングの残高、資金繰り表は、どれか一つに置き換えるものではありません。それぞれ見る時間軸と目的が違います。

 

試算表・預金残高・資金繰り表の役割比較

 

試算表からは、売上・粗利・人件費・利益などを確認できます。預金残高からは、今いくらあるかがわかります。資金繰り表では、試算表や請求・支払情報を使いながら、将来の現預金残高を予測します。

資金繰り表だけで会社の収益性を判断するのも不十分です。毎月の試算表で利益構造を確認し、資金繰り表で入出金の時期を確認する。この二つを一緒に見ることが基本です。

 

資金繰り表には何を入れる?

日本政策金融公庫は資金繰り表と簡易版、記入例を公開しています。ゼロから様式を考えるより、まず公的なひな形を見て、自社に必要な項目へ調整すると始めやすくなります。

基本構造は、「前月末の現預金残高+当月の入金−当月の支払い=当月末の現預金残高」です。最低限、次の項目を入れます。

 

  • 前月から繰り越す現金・預金残高

  • 現金売上、売掛金回収、その他の営業収入

  • 仕入、外注費、人件費、家賃、経費、税金などの営業支出

  • 設備購入、有価証券購入などの投資支出

  • 借入金の入金、元本返済などの財務収支

  • 当月末に残る現金・預金残高

 

実務では、項目を増やしすぎると更新が止まりやすくなります。経営判断に影響する項目を分け、金額の小さい経費はまとめる方法でも構いません。最初は簡易版で始め、必要になった段階で部門別・口座別などの管理を追加します。

 

見落としやすい支出を先に洗い出す

毎月同額の家賃や給与は記入しやすい一方、年に数回の支出は漏れやすい項目です。法人税・消費税・固定資産税・社会保険料・賞与・保険料・車検・システム更新料・設備の頭金などを年間予定から拾います。

売上の予測も、希望額ではなく入金可能性で分けます。請求済み、受注済み、見込みの三段階に分け、見込み案件は確度を下げて計上するか、基本表とは別に置きます。未確定の売上を満額で入れると、表のうえでは資金不足が消えてしまうため注意が必要です。

 

6か月の資金繰り表はどう作る?

 

1.現在の残高を確定する

まず、現金と各銀行口座の残高を基準日時点で集計します。会計ソフトの残高だけを使わず、通帳やネットバンキングの実残高と一致するか確認します。未処理の振込や口座振替がある場合は、その支払予定も別に記録します。

 

2.確定している入金予定を並べる

請求書、売掛金一覧、契約書、受注管理表を確認し、入金予定月に記入します。請求月ではなく、実際の入金条件で置くことが重要です。回収遅れが常態化している取引先は、契約上の期日ではなく実績に近い日付で見積もります。

 

3.確定している支払いを並べる

買掛金・未払金一覧、給与台帳、納税予定、借入返済予定表、定期契約を確認します。クレジットカードは利用月ではなく引落月に入れます。借入返済は、利息だけでなく元本も含めた実際の口座引落額を使います。

 

4.4〜6か月先の売上と変動費を予測する

遠い月ほど不確実性が高くなるため、過去実績、継続契約、受注残、営業計画を使って控えめに予測します。売上に連動する仕入・外注費・決済手数料なども同じ前提で動かします。

楽観的な計画だけではなく、「売上が計画の80%だった場合」「大口入金が1か月遅れた場合」も試算すると、必要な現預金の余裕を判断しやすくなります。

 

5.月末残高と社内の最低ラインを比べる

月末残高がプラスなら必ず安全、というわけではありません。会社ごとに、給与・家賃・仕入など何か月分を手元に残すか、最低ラインを決めます。季節変動が大きい会社、入金サイトが長い会社、大口取引先への依存度が高い会社ほど、余裕を厚くする必要があります。

最低ラインを下回る月には印を付け、「いつまでに、誰が、何をするか」を決めます。融資相談の開始時期、投資の見直し期限、回収確認日まで書けば、資金繰り表が行動管理の資料になります。

 

6.毎月、予測を実績へ置き換える

月が終わったら、予測額を実績額へ置き換えます。差が大きかった項目は、金額だけでなく理由を残します。「A社の入金が翌月へずれた」「広告費を前倒しした」のように記録すると、次回の予測精度が上がります。

 

改善前と改善後で経営判断はどう変わる?

たとえば、預金残高1,500万円の会社が、300万円の採用・広告投資を検討しているとします。残高だけを見れば、十分に投資できるように感じます。

しかし6か月の資金繰り表を作ると、2か月後に消費税400万円、3か月後に賞与300万円、毎月の借入返済80万円があり、売掛金500万円の入金が遅れる可能性もわかりました。投資を予定どおり行うと、3か月後の残高が社内の最低ラインを下回る見込みです。

改善前は「現在の残高」で投資を決めていました。改善後は、広告を2回に分け、入金確認後に2回目を実行する方法へ変更します。同時に、資金が不足する前に金融機関へ運転資金を相談できます。

資金繰り表の価値は、未来を完全に当てることではありません。予定が外れた場合にも、早く気づいて判断を変えられる状態を作ることにあります。

 

どこまで自動化・外注できる?

会計ソフトや請求管理、ネットバンキングを連携すれば、過去の入出金や定期的な支払いを集めやすくなります。経理業務をリモート化する手順を整えると、社外の担当者とも資料を共有しやすくなります。

一方、将来の売上確度、投資を実行するか、どの残高を最低ラインにするかは、システムだけで決められません。自動化はデータ収集と転記を減らし、外注先は表の作成・更新・差異分析を支援できますが、最終的な経営判断は社内に残ります。

役割分担の一例は次のとおりです。

 

担当

自動化・外注しやすい業務

社内に残す情報・判断

システム・経理

データ取得、定型集計、入出金予定の整理、表の更新、差異確認

集計ルールの承認、例外取引の説明

営業・各部門

受注情報や入金予定を所定の様式で共有

受注確度、入金遅延、設備・採用計画の共有

経営者

判断材料の整理、複数シナリオの試算

最低残高、投資・借入・支出見直しの最終判断

税理士・金融機関

納税見込み、決算数値、資金調達に関する助言

助言を踏まえた自社方針の決定

 

資金繰り表の作成を含め、経理代行へ依頼できる一般的な業務は、経理代行とは、具体的に何をしてくれるサービス?でも詳しく説明しています。

 

運用を始める前のチェックリスト

資金繰り表を作るだけで終わらせず、次の項目を社内で確認してください。

 

  • 基準日の現金・預金残高が実残高と一致している

  • 売上計上月ではなく、入金予定月で記入している

  • 仕入・外注費・給与・家賃など毎月の支払いを入れている

  • 税金、社会保険料、賞与、保険料など年に数回の支払いを入れている

  • 借入金の元本返済と利息を実際の引落月へ入れている

  • 設備投資、採用、広告など予定する投資を入れている

  • 未確定売上を確定売上と分けている

  • 社内の最低現預金残高を決めている

  • 最低ラインを下回る月の行動と期限を決めている

  • 毎月の更新日と担当者を決めている

 

すべてを一度に完璧にする必要はありません。まず3か月分を作り、翌月に6か月へ伸ばす方法でも構いません。更新できる項目数で始め、経営判断に足りない情報だけを追加します。

 

よくある質問

 

売上が安定していても資金繰り表は必要ですか?

売上が安定していても、納税、賞与、設備投資、借入返済などで支出が集中する月があります。入金と支払いの時期が完全に一致する会社も多くありません。簡易版でも6か月先を毎月確認しておくと、急な出費への備えや投資判断に使えます。

 

12か月先まで細かく作るべきですか?

年間の納税・賞与・設備投資を把握するため、12か月の大枠を持つことには意味があります。ただし、遠い月ほど不確実性が高くなります。まず3〜6か月を具体的に作り、7〜12か月は大口の入出金と固定費を中心に置く方法が現実的です。

 

資金が厳しいときも月次表だけでよいですか?

支払いが迫っている場合、月末残高だけでは月の途中の不足を見落とします。週次表を併用し、必要に応じて日付別の入出金予定を作ります。金融機関や税理士などへの相談も、支払期限の直前ではなく、可能な限り早めに始めます。

 

会計ソフトから自動で作れますか?

過去実績や口座残高は連携しやすい一方、未請求の売上、受注確度、将来の採用・設備投資などは社内から情報を集める必要があります。自動作成された数字をそのまま使わず、実際の入金・支払予定と照合してください。

 

資金繰り表は金融機関へ必ず提出しますか?

融資の種類や会社の状況によって必要資料は異なります。日本政策金融公庫が資金繰り表の様式を公開しているように、資金計画を説明する代表的な資料ではありますが、提出の要否や書式は相談先へ確認してください。日頃から更新しておけば、相談が必要になったときに慌てず説明しやすくなります。

 

まず6か月先の残高を見えるようにする

資金繰り表は、現在の預金残高を確認する表ではなく、将来の入金と支払いを並べ、資金不足を早めに見つけるための表です。中小企業が最初に取り組むなら、月次で6か月先までを基本にし、最低でも3か月先を確認します。資金不足が近い場合は、週次管理も併用します。

最初から精密な予測を作るより、確定している入出金から始め、毎月実績との差を直すほうが運用は続きます。資金繰り表と月次試算表を一緒に確認し、投資・借入・支出見直しの判断へつなげてください。

品川・横浜 経理代行ステーションでは、日々の経理だけでなく、資金繰り表の作成・更新、融資や銀行対応を含む経理体制づくりを支援しています。自社でどこまで管理し、どこから外部へ任せるべきかわからない場合は、無料相談をご利用ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、融資の承認、資金調達の実行、将来の資金残高を保証するものではありません。実際の判断は、自社の契約・入出金予定を確認し、必要に応じて金融機関、税理士、その他の専門家へご相談ください。

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