経理の引継ぎがないまま退職されたら、どう対応すべき?
- 7月23日
- 読了時間: 11分

経理担当者が、十分な引継ぎをしないまま退職してしまうことがあります。
社長やほかの社員が経理業務の内容を把握していない会社では、
「今月の支払いは何が残っているのか」
「給与計算は誰が行うのか」
「会計ソフトにログインできない」
「請求書がどこに保存されているかわからない」
といった問題が一気に発生します。
しかし、引継ぎ資料がなくても、確認する順番を間違えなければ経理業務を立て直すことは可能です。
まずは、すべての経理業務を完璧に把握しようとするのではなく、お金の出入りと期限がある業務から順番に確認することが重要です。
経理の引継ぎがないまま退職された場合はどうする?
経理の引継ぎがない場合は、次の順番で対応します。
銀行口座や会計ソフトの権限を確保する
直近1か月の支払い期限を確認する
請求書の発行状況と入金状況を確認する
給与計算と税金・社会保険の期限を確認する
会計データと証憑を回収する
毎月の経理業務を一覧にする
社内で対応するか経理代行を利用するか判断する
特に優先すべきなのは、支払い、給与、請求、入金です。
記帳や資料整理は後から修正できますが、取引先への支払いや従業員への給与が遅れると、会社の信用に影響する可能性があります。
まず確認すべき5つの経理情報
引継ぎがない場合は、経理担当者のパソコンや机の中だけを探すのではなく、会社に残っている情報から業務を復元していきます。
1.銀行口座と支払い権限
最初に、会社が利用しているすべての銀行口座を確認します。
確認するものは次のとおりです。
法人口座の一覧
インターネットバンキングのログイン情報
振込承認者
ワンタイムパスワードや認証端末
通帳、銀行印、キャッシュカード
定期的に支払っている取引先
自動引き落としの内容
法人カードの利用明細
退職した経理担当者だけが振込権限を持っている場合は、銀行へ連絡し、利用者や承認者の変更手続きを行います。
退職者のアカウントはそのままにせず、必要なデータを保存したうえで、利用停止やパスワード変更を行いましょう。
2.支払予定と未払いの請求書
次に、今後1か月以内に支払期限が来るものを洗い出します。
経理担当者のメール、郵送物、請求書保存フォルダ、会計ソフト、インターネットバンキングの振込履歴などを確認してください。
支払いについては、次のような表を作成すると整理しやすくなります。
支払先 | 支払内容 | 金額 | 支払期限 | 支払方法 | 対応状況 |
株式会社〇〇 | 仕入代金 | 300,000円 | 8月31日 | 銀行振込 | 未対応 |
〇〇不動産 | 事務所家賃 | 200,000円 | 毎月27日 | 自動引落 | 確認済み |
〇〇システム | システム利用料 | 33,000円 | 毎月末 | 法人カード | 確認済み |
過去3か月程度の銀行口座の出金履歴を見ると、毎月発生している支払いを把握できます。
一方で、スポットで発生した仕入れや外注費は、銀行履歴だけでは把握できないことがあります。メールや郵送物もあわせて確認しましょう。
3.請求書の発行状況と入金状況
支払いだけでなく、会社に入ってくるお金の確認も必要です。
次の内容を確認してください。
当月分の請求書を発行しているか
請求書の送付先と送付方法
毎月請求している取引先
まだ入金されていない売掛金
入金期限を過ぎている取引先
請求書のひな型や請求書発行システム
請求書番号の付け方
過去の請求書や入金履歴を確認し、取引先ごとに請求金額と請求時期を整理します。
請求書の発行が遅れると、その分だけ入金も遅れます。資金繰りに影響するため、支払い確認と並行して進めましょう。
給与計算と税金・社会保険の期限を確認する
給与計算を経理担当者が行っていた場合は、給与の締日と支給日を確認します。
最低限、次の情報が必要です。
給与の締日と支給日
従業員ごとの基本給
残業時間や欠勤情報
通勤手当や各種手当
社会保険料
所得税
住民税
給与振込の方法
給与明細の発行方法
給与計算ソフトのログイン情報
給与計算が間に合わない可能性がある場合は、早い段階で社会保険労務士や給与計算代行会社へ相談することも検討します。
また、給与から差し引いた源泉所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに納付します。納期の特例を利用している会社は、通常とは納付時期が異なるため、過去の納付書や電子申告の履歴も確認してください。
健康保険料や厚生年金保険料についても納付期限があります。口座振替になっているのか、納付書で支払っているのかを確認しておきましょう。
会計ソフトと関連サービスのログイン情報を確認する
経理業務では、会計ソフトだけでなく複数のシステムを利用していることがあります。
例えば、次のようなサービスです。
会計ソフト
請求書発行システム
経費精算システム
給与計算ソフト
勤怠管理システム
インターネットバンキング
法人カードの管理画面
電子契約サービス
クラウドストレージ
税金の電子申告・電子納付システム
ログインできない場合は、登録メールアドレスを確認し、パスワードの再設定を行います。
退職者の個人メールアドレスや個人の携帯電話が認証先になっている場合は、会社管理のメールアドレスや電話番号へ変更しましょう。
ただし、急いですべてのアカウントを削除すると、過去のメールや取引履歴まで確認できなくなることがあります。
必要なデータを保存してから、権限変更やアカウント停止を行うことが大切です。
領収書や請求書などの証憑を回収する
会計データが残っていても、その根拠となる領収書や請求書が見つからない場合があります。
次の場所を確認してください。
経理担当者の机や書類棚
会社の共有フォルダ
クラウドストレージ
経理担当者の業務用メール
会計ソフトの添付ファイル
請求書受領システム
法人カードの管理画面
税理士と共有しているフォルダ
郵便物や未開封の封筒
紙とデータが混在している会社では、同じ書類が複数の場所に保存されていることもあります。
まずは証憑を1か所に集め、「処理済み」「未処理」「内容不明」に分けて整理すると、その後の確認がしやすくなります。
引継ぎ資料がない経理業務を復元する方法
経理業務は、過去の記録を調べることである程度復元できます。
銀行口座の履歴から支払いを確認する
過去3か月から1年程度の出金履歴を確認すると、毎月支払っている家賃、仕入れ、外注費、システム利用料などがわかります。
同じ取引先へ定期的に支払っている場合は、契約書や過去の請求書も探します。
過去の請求書から売上の流れを確認する
過去の請求書を取引先ごとに並べると、毎月請求する会社、請求日、金額、入金予定日を整理できます。
請求書が見つからない場合でも、銀行口座の入金履歴や販売管理システムから確認できることがあります。
会計ソフトから取引先と業務内容を確認する
会計ソフトには、過去の売上、仕入れ、経費、未払金、売掛金などの情報が残っています。
ただし、会計ソフトへの入力が遅れている可能性もあります。銀行口座や請求書と照合しながら確認してください。
税理士や社会保険労務士へ確認する
顧問税理士がいる場合は、次の内容を確認します。
最後に会計データを受け取った時期
どこまで記帳が完了しているか
未提出の資料
税金の納付予定
決算や申告の期限
経理担当者との連絡方法
毎月の作業分担
給与計算や社会保険手続きを社会保険労務士へ依頼している場合も、どこまで対応してもらっていたのかを確認しましょう。
経理業務の復元チェックリスト
引継ぎがない場合は、次の表を使って確認を進めます。
確認項目 | 主な確認先 | 優先度 |
法人口座と振込権限 | 銀行、通帳、ネットバンキング | 最優先 |
支払予定 | メール、請求書、銀行履歴 | 最優先 |
給与計算 | 給与ソフト、勤怠データ | 最優先 |
請求書発行 | 過去の請求書、販売管理システム | 高 |
売掛金と入金状況 | 銀行口座、会計ソフト | 高 |
税金の納付 | 税理士、納付書、電子申告履歴 | 高 |
社会保険料 | 年金事務所、納付書、口座履歴 | 高 |
会計入力 | 会計ソフト、税理士 | 中 |
領収書・請求書 | 書類棚、メール、共有フォルダ | 中 |
月次資料 | 会計ソフト、Excel、共有フォルダ | 中 |
契約書 | 契約管理フォルダ、総務担当者 | 中 |
すべてを一度に確認するのではなく、「支払いが止まる」「給与が支払えない」「請求が遅れる」といった影響の大きい業務から進めてください。
引継ぎがないときに避けたい対応
新しい経理担当者の採用まで何もしない
採用活動には時間がかかります。
採用が決まるまで経理業務を止めてしまうと、支払い、請求、給与計算、税金の納付などが遅れる可能性があります。
採用とは別に、当面の経理業務を担当する人や外部の支援先を確保しましょう。
内容を確認せずに前月と同じ金額を支払う
毎月同じ取引先でも、請求金額が変わっていることがあります。
前月の支払実績だけで判断せず、請求書や契約内容を確認したうえで支払うことが必要です。
急にすべての仕組みを変更する
引継ぎがない状態で、会計ソフトや請求方法まで一度に変更すると、さらに業務が混乱することがあります。
まずは現在の経理業務を復元し、支払いと請求を安定させてから、クラウド化や自動化を進めましょう。
退職者のアカウントを放置する
退職者が利用していたインターネットバンキング、会計ソフト、法人カード、クラウドストレージなどの権限は必ず確認します。
必要な履歴を保存したうえで、パスワード変更、権限削除、認証先の変更を行いましょう。
社内対応と経理代行のどちらを選ぶべき?
経理業務が少なく、社内に内容を把握している社員がいる場合は、社内で立て直せる可能性があります。
一方で、次のような会社は経理代行を検討したほうがよいでしょう。
経理業務の全体像を誰も把握していない
給与や支払いの期限が迫っている
会計入力が数か月遅れている
請求件数や取引件数が多い
社長が経理対応に追われている
新しい経理担当者をすぐに採用できない
今後も退職による経理停止を防ぎたい
経理代行を利用する場合でも、すべての業務を最初から依頼する必要はありません。
まずは給与計算、請求書発行、支払い管理、記帳など、緊急度の高い業務から依頼し、段階的に範囲を広げる方法もあります。
よくある質問
Q.経理担当者と連絡が取れない場合でも復旧できますか?
銀行口座、過去の請求書、会計ソフト、メール、顧問税理士などに情報が残っていれば、経理業務を復元できる可能性があります。
まずは支払い、給与、請求、入金の状況から確認してください。
Q.会計ソフトにログインできない場合はどうすればよいですか?
登録されているメールアドレスを確認し、パスワードの再設定を行います。
退職者個人のメールアドレスが登録されている場合は、会計ソフト会社へ連絡し、管理者変更に必要な手続きを確認しましょう。
Q.経理担当者のパソコンはすぐに初期化してもよいですか?
経理データ、メール、請求書、パスワード情報などが残っている可能性があるため、必要なデータを確認する前の初期化は避けたほうがよいでしょう。
会社の情報管理ルールに従い、データを保全してから対応してください。
Q.顧問税理士にすべて対応してもらえますか?
税理士との契約内容によって異なります。
決算や税務申告だけを依頼している場合、請求書発行、支払い、給与計算、売掛金管理などの日常的な経理業務は契約に含まれていないことがあります。
現在の契約範囲を確認し、対応できない業務は経理代行会社などへ相談しましょう。
Q.引継ぎがなくても経理代行を依頼できますか?
引継ぎ資料がない状態からでも、銀行口座、請求書、会計ソフト、給与データなどを確認し、経理業務を整理できる場合があります。
ただし、期限が迫っている業務ほど対応が難しくなるため、早めに相談することが重要です。
まとめ
経理担当者が引継ぎをしないまま退職した場合は、次の順番で対応します。
銀行口座と各システムの権限を確保する
支払い、給与、請求、入金の期限を確認する
会計ソフトやメールから過去の業務を調べる
領収書や請求書などの証憑を集める
毎月の経理業務を一覧にする
社内対応が難しければ経理代行へ相談する
引継ぎ資料がない場合でも、銀行履歴、過去の請求書、会計データ、税理士とのやり取りなどから経理業務を復元できます。
大切なのは、最初から完璧な状態を目指すことではありません。
まずは支払い、給与、請求、入金など、会社のお金に直接影響する業務を止めないことを優先しましょう。
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