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銀行融資を受ける前に、経理で何を整えておくべき?

1 日前
読了時間: 13分
銀行融資を受ける前に、経理で何を整えておくべき?

 

銀行融資を受ける前に経理で整えたいのは、直近の月次試算表、資金繰り表、借入金一覧、資金使途と必要額、そのお金を返す原資の説明です。決算書だけを持参するのではなく、決算後に会社の数字がどう動いたか、借入後に資金がどう回るかまで一つの流れで示せる状態を目指します。

 

ただし、資料を多く作れば融資が承認されるわけではありません。審査基準や必要書類は金融機関、融資制度、会社の状況によって異なります。大切なのは、数字をよく見せることではなく、帳簿と実態のずれを減らし、質問されたときに根拠を説明できることです。

 

この記事では、月次試算表、資金繰り表、借入一覧、売上・利益の見通しをどう整え、どこまで自動化・外注できるかを初心者向けに整理します。金融機関へ連絡する直前に慌てないよう、日常経理から準備する手順も具体的に解説します。

 

銀行融資の前に、まず5つの情報をそろえる

 

融資相談では、過去の決算だけでなく「今の会社がどうなっているか」「何にいくら必要か」「どう返すか」が重要です。次の5つを同じ基準日でそろえると、数字のつながりを確認しやすくなります。

 

  1. 直近まで締めた月次試算表

  2. 今後6か月程度の資金繰り表

  3. 金融機関別・契約別の借入金一覧

  4. 資金使途、必要額、支払時期の内訳

  5. 売上・利益・返済原資の見通しと前提

 

 

日本政策金融公庫の融資申込案内では、法人が融資を申し込む際の準備書類として、原則として最近2期分の確定申告書・決算書(勘定科目明細書を含む)を案内しています。また、決算後6か月以上が経過している場合などには、最近の試算表を準備するよう案内しています。実際の必要書類は相談先へ確認する必要がありますが、直近の数字を説明できる月次試算表が重要であることが分かります。

 

整える資料・情報

金融機関へ伝えられること

経理で確認する点

月次試算表

決算後の売上、粗利、利益、資産・負債の変化

預金、売掛金、買掛金、借入金などの残高が実態と合うか

資金繰り表

入金・支払・返済後に現金がどう動くか

期首残高、回収日、支払日、税金、返済を同じ期間で並べたか

借入金一覧

現在の借入残高、毎月返済額、満期、担保・保証の状況

金融機関、契約、残高、金利、返済日を契約書と照合したか

資金使途の内訳

希望額の根拠と、使う時期

見積書、発注予定、仕入計画、人件費などと金額が一致するか

売上・利益見通し

返済原資がどこから生まれるか

受注済み、見込み、希望的な数字を区分したか

 

 

資料同士の基準日がずれていると、借入残高や預金残高が一致せず、説明に時間がかかります。たとえば試算表は8月末、借入一覧は7月末、資金繰り表は現在残高から始まっている、といった状態を避けます。作成日と基準日を各資料へ明記してください。

 

月次試算表は「新しいこと」と「残高が合っていること」が重要

 

月次試算表は、一定期間の売上・費用・利益を示す損益計算書と、基準日時点の資産・負債・純資産を示す貸借対照表を中心に確認します。融資相談のためだけに急いで作るのではなく、毎月同じ締め方で更新できる状態が理想です。

 

まず、現預金残高を通帳やインターネットバンキングと照合します。次に、売掛金・買掛金・未払金が取引先別の明細と合うか、借入金残高が返済予定表と合うかを確認します。在庫がある会社は、帳簿上の在庫と実地の数量・評価方法に大きなずれがないかも見ます。

 

売上や利益が増えていても、売掛金や在庫が増え、現金が減っている場合があります。反対に、一時的な入金で預金が増えていても、翌月に税金や仕入代金の大きな支払が控えていることもあります。試算表は利益だけを見る資料ではなく、資産・負債の変化と合わせて確認する資料です。

 

未処理の領収書や請求書が多いままでは、数字の精度が分かりません。すべてが確定するまで相談を遅らせる必要はありませんが、未処理額がある場合は「何が未確定で、おおよそいくらか」を一覧にします。仮払金、立替金、社長貸付金・借入金など説明が必要になりやすい科目も、内訳を確認しておきます。

 

資金繰り表は、借入が必要な時期と金額を確かめる

 

資金繰り表は、利益ではなく現金の出入りを時間順に並べる資料です。売上が発生しても入金が翌月以降なら、その間の仕入や給与を支払う資金が必要です。設備投資では、発注時・納品時・補助金入金時など、支出と入金の時期がずれることがあります。

 

少なくとも、現在の現預金残高、売上入金、仕入・外注費、給与、家賃、税金、借入返済、設備代金を月ごとに並べます。借入を実行しない場合と、希望額を希望時期に借りた場合の2つを比べると、必要額が過大・過小でないかを確認しやすくなります。

 

見通しには前提を書きます。たとえば「既存契約は契約額の100%」「提案中案件は含めない」「大口売掛金は通常より1か月遅れて入金」のように、数字の置き方を説明できるようにします。売上が計画を下回る場合や入金が遅れる場合も試算すると、どこで資金が不足するかを早めに把握できます。

 

資金繰り表の期間と作り方は、資金繰り表はなぜ必要?中小企業は何か月先まで見るべき?で詳しく解説しています。本記事では作成方法を繰り返さず、融資相談に向けて他の資料と一致させる点に焦点を当てます。

 

借入金一覧は「金融機関ごと」ではなく「契約ごと」に作る

 

同じ金融機関から複数の借入がある場合、合計残高だけでは毎月の返済や満期が分かりません。借入金一覧は契約ごとに分け、金融機関名、当初借入額、現在残高、実行日、満期日、毎月返済額、金利、返済方法、担保・保証の有無を整理します。

 

当座貸越やカードローン、代表者借入、リースなども、資金負担を把握するうえで別欄に整理すると便利です。ただし、会計上・契約上の区分は顧問税理士や金融機関へ確認してください。借入一覧の残高合計は、試算表の借入金残高と照合します。差がある場合は、直近返済の未反映、元金と利息の区分、短期・長期の振替などを確認します。

 

一覧を作る目的は、借入が多いことを隠すためではありません。既存返済を続けながら新しい借入を返せるか、返済が集中する月はないか、借換えや据置期間を相談する必要があるかを把握するためです。

 

資金使途と希望額は、見積書や運転資金の内訳で説明する

 

「念のため1,000万円」「資金繰りが不安だから」といった説明だけでは、金額の根拠が伝わりません。設備資金なら、設備本体、設置、工事、運送、付帯費用などを見積書と対応させます。運転資金なら、仕入、人件費、外注費、家賃、回収までの期間などから必要額を積み上げます。

 

必要額を計算するときは、すでに支払った金額、自己資金で負担する金額、補助金や売却代金など別の入金予定を分けます。借入実行を希望する日と実際の支払日も確認します。審査や契約には時間がかかるため、支払直前ではなく余裕を持って相談します。

 

返済原資は、借入後の売上・粗利・経費を基に説明します。設備導入で生産量が増える、在庫仕入で販売機会を確保する、採用で受注能力が上がるなど、資金使途と売上・利益の変化をつなげます。期待値だけでなく、受注実績、既存顧客の継続、見積・契約、過去の季節変動など根拠も示します。

 

金融庁が2026年5月に公表した事業性融資に関する基本的な考え方では、事業者と金融機関が事業計画などを基に将来見通しを共有し、資金使途に合った返済計画や融資方法を選ぶ考え方が示されています。担保や過去実績だけでなく将来の事業を説明する場面でも、経理の数字と事業計画がつながっていることが重要です。

 

改善前後の例:仕入資金1,000万円を相談する卸売会社

 

年商1億2,000万円の卸売会社が、繁忙期前の在庫仕入のため1,000万円を相談する例を考えます。これは説明方法を理解するための仮定例で、融資判断や金額を保証するものではありません。

 

改善前は、前期決算書と預金残高だけを用意していました。売上は前年より増えていましたが、売掛金と在庫も増え、なぜ現金が減ったのかを説明できません。既存借入は金融機関別の合計しか分からず、毎月返済額も担当者の記憶に頼っていました。

 

改善後は、8月末までの試算表を締め、売掛金と在庫の増加理由を明細で確認しました。過去2年の繁忙期売上と粗利率を基に仕入・販売・回収の時期を置き、6か月の資金繰り表を作成しました。既存借入は契約別に整理し、新規借入後の返済を加えた場合も現金が回るかを確認しました。

 

項目

改善前

改善後の例

直近業績

前期決算のみ

8月末試算表と前年同月比較を準備

必要額

余裕を見て1,000万円

仕入900万円、運送等60万円、予備40万円と内訳化

入金見通し

売上増加の見込みだけ

受注・過去実績・回収条件から月別に整理

既存借入

金融機関別の残高だけ

契約別の残高・返済額・満期を一覧化

返済説明

利益から返すと説明

粗利、固定費、既存返済を反映した資金繰りで確認

 

 

改善のポイントは、数字を大きく見せたことではありません。売上増加と資金減少が同時に起きた理由を、売掛金・在庫・支払時期で説明し、希望額と返済見通しを同じ資料で確認できるようにしたことです。

 

融資相談前の経理準備は5つの手順で進める

 

  1. 基準日を決め、月次試算表を締める

  2. 6か月程度の入出金予定を資金繰り表へ入れる

  3. 借入残高と返済予定を契約別に整理する

  4. 資金使途、必要額、実行希望日、返済原資を文章と数値で結ぶ

  5. 前年・計画との差異と想定質問への回答を確認する

 

 

融資相談前の経理準備5ステップ

 

 

最初に基準日を決めると、資料間の残高を合わせやすくなります。月次締めが遅れている場合は、銀行・カード明細、売上、仕入、給与、税金など影響の大きい項目から確認し、未確定項目は別表にします。

 

次に、資金繰り表へ既存借入と新規借入の返済を反映します。借入一覧と一致しているか、元金返済と利息を混同していないかを確認します。そのうえで、売上が計画より10%下がる、入金が1か月遅れるなど条件を変え、資金余力を見ます。

 

最後に、数字の差異を説明する練習をします。売上増減、粗利率変化、人件費増加、在庫増加、売掛金回収の遅れ、一時的な費用など、前年や計画と大きく違う項目を選び、原因と今後の対応を短くまとめます。分からない点を推測で埋めず、確認中であることと回答予定日を伝えられるようにします。

 

どこまで自動化・外注でき、社内には何を残すか

 

融資資料の作成を外部へ依頼することはできますが、会社の事実や計画まで外部が決めることはできません。定型集計はシステムや経理代行へ任せ、経営判断と最終説明は社内へ残します。

 

業務

自動化・外注しやすい範囲

社内・専門家に残す役割

月次試算表

明細連携、記帳、残高照合、前年差資料

取引内容の説明、例外承認、税務判断は税理士へ確認

資金繰り表

入出金データ更新、返済予定反映、複数シナリオ作成

売上確度、支払優先順位、借入希望額の判断

借入一覧

契約情報の転記、残高更新、返済予定集計

契約原本の確認、条件交渉、担保・保証の判断

資金使途

見積・計画の一覧化、必要額の計算補助

投資・仕入・採用の実行判断、発注・契約

面談準備

資料順序、差異一覧、想定質問の整理

事業の強み、課題、改善策、返済意思の説明

 

 

経理代行へ依頼する場合は、月次試算表や資金繰り表の作成期限、質問への回答担当、金融機関へ提出する前の確認者を決めます。経理代行で資金繰り管理まで依頼できる?では、外注できる範囲と社内に残る判断を詳しく紹介しています。

 

金融機関との交渉、借入条件の選択、契約は会社側が行います。融資制度の案内や資料作成支援を受ける場合も、最終的な申込内容と返済義務を確認してください。税務処理は税理士、法的な契約判断は弁護士など、内容に応じて専門家へ相談します。

 

注意したいのは「数字を整える」と「数字を作る」の違い

 

融資を受けたいからといって、売上時期を不自然に前倒ししたり、費用や債務を除外したりしてはいけません。経理を整えるとは、証憑を回収し、取引を正しい期間と科目へ反映し、残高を実態と合わせ、見通しの前提を明らかにすることです。

 

赤字や債務超過、税金・社会保険料の未納、回収遅延など不利に見える事項がある場合も、隠すのではなく事実を把握します。その理由が一時的か構造的か、改善策は何か、いつまでに何を行うかを整理します。必要に応じて早めに税理士、金融機関、支援機関へ相談してください。

 

また、提出資料の版管理にも注意します。社内用と提出用で数字が違う、修正前の試算表を送る、複数人が別々の資金繰り表を更新するといった事態を避けます。ファイル名に基準日と更新日を入れ、提出責任者を一人決めます。

 

融資相談前のチェックリスト

 

  • 直近月までの試算表を締め、現預金残高を照合した

  • 売掛金・買掛金・未払金・在庫の内訳を確認した

  • 借入金残高を返済予定表と照合した

  • 決算後の売上・粗利・利益の変化を説明できる

  • 6か月程度の資金繰り表を作成した

  • 税金、賞与、設備代金など大口支出を反映した

  • 借入金一覧を契約別に作成した

  • 資金使途と希望額を見積・内訳で確認した

  • 借入がない場合とある場合の資金残高を比較した

  • 売上見通しを受注済み・見込みに分けた

  • 返済原資と既存返済を同じ期間で確認した

  • 前年・計画との差異と改善策を整理した

  • 提出資料の基準日、更新日、確認者をそろえた

  • 必要書類を相談先の金融機関へ確認した

 

 

チェック項目が多く見えても、一度に特別な資料を作る必要はありません。毎月の締め、残高照合、資金予定、借入残高の更新を定例化すれば、融資相談のたびに一から集める作業を減らせます。

 

よくある質問

 

決算書があれば、月次試算表は不要ですか?

 

相談時期や金融機関によって必要書類は異なります。決算から時間が経過している場合、現在の業況を示す試算表を求められることがあります。日本政策金融公庫も、法人で決算後6か月以上が経過している場合などに最近の試算表を準備するよう案内しています。事前に相談先へ確認してください。

 

資金繰り表は何か月先まで必要ですか?

 

一律の決まりはありませんが、日常管理では月次で6か月先を基本にすると、大口支払や返済を早めに把握しやすくなります。業種の季節性、設備投資、入金サイト、融資制度に応じて3か月、12か月、週次などを使い分けます。

 

赤字だと融資は受けられませんか?

 

赤字という事実だけで結果を断定することはできません。金融機関は会社の状況や制度に応じて判断します。赤字の原因、一時的か継続的か、今後の売上・利益・資金繰り、改善策を数字と事実で説明できるようにしてください。承認を保証する説明は避けます。

 

経理代行会社に銀行面談をすべて任せられますか?

 

資料整理や面談前の論点確認を支援できる場合はありますが、事業内容、資金使途、将来計画、返済方針を最終的に説明し判断するのは会社側です。誰が同席し、誰が質問へ回答し、条件を誰が決めるかを事前に確認します。

 

借入希望額は多めに申請した方がよいですか?

 

多ければよいとは限りません。資金使途、支払時期、自己資金、既存借入、返済可能性から必要額を積み上げます。予備資金を含める場合も、その理由と計算根拠を説明します。融資条件や希望額は金融機関へ相談してください。

 

試算表が遅れている場合、何から直せばよいですか?

 

まず銀行・カード明細、売上、仕入、給与、税金、借入返済など金額と影響の大きい項目を締めます。未回収証憑と不明取引を一覧化し、担当者と回答期限を決めます。月次数字を早く見る仕組みは、経営の見える化とは?経理データで何を確認すべき?も参考にしてください。

 

融資相談は、数字の鮮度と説明の一貫性から準備する

 

銀行融資の前に経理で整えるべきなのは、決算書だけではありません。直近試算表で現在地を確認し、資金繰り表で今後の現金を見通し、借入一覧で既存返済を把握し、資金使途と返済原資を一つの流れで説明できる状態を作ります。

 

資料は多さより、基準日と数字が一致し、前提を説明できることが重要です。月次締め、残高照合、資金予定、借入更新を平常時から行えば、必要なときに早く金融機関へ相談できます。

 

品川・横浜 経理代行ステーションでは、月次試算表の基礎資料、資金繰り表、借入一覧、金融機関向け資料を整える経理体制づくりを支援しています。試算表が遅れている、必要額の根拠を整理できない、社内だけでは資料更新が続かないといった場合は、お問い合わせページからご相談ください。

 

※本記事は2026年9月28日時点の公的機関・公式情報をもとにした一般的な解説です。融資の必要書類、審査、金利、期間、担保・保証などは金融機関、制度、会社の状況により異なり、融資の承認を保証するものではありません。申込前に相談先の金融機関へ最新条件をご確認ください。税務は税理士、法務は弁護士などの専門家へご相談ください。

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