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経理の紙書類を減らすには、どう進めればいい?

2 日前
読了時間: 14分
経理の紙書類を減らすには、どう進めればいい?

 

経理の紙書類を減らすなら、最初に行うべきことは、社内にある紙を一度にスキャンすることではありません。「どの書類が、どこから届き、誰が確認し、どこへ保存され、どの処理につながるか」を整理し、請求書や領収書など件数の多い書類から、受取・承認・保存をまとめてデジタル化することです。

 

紙をPDFに変えても、印刷して承認印をもらったり、担当者の机に領収書を置いたりする運用が残れば、経理の負担は十分に減りません。反対に、受取窓口、ファイル名、保存場所、承認者、紙を廃棄する条件まで決めると、検索や引継ぎがしやすくなります。

 

注意したいのは、メールやウェブから受け取った請求書と、紙で受け取ってスキャンした請求書では、電子帳簿保存法上の扱いが異なることです。紙を減らすことと、税務上の保存要件を満たすことは、同じではありません。

 

この記事では、中小企業が無理なくペーパーレス化を進める順序を、証憑保存、スキャン、電子取引データ、承認フロー、外注との役割分担まで含めて説明します。

 

最初に「電子で受け取った書類」と「紙をスキャンする書類」を分ける

 

経理書類のデータ保存は、大きく3つに分けて考えると整理しやすくなります。電子メールに添付された請求書、取引先サイトからダウンロードした領収書、クラウドサービス上で交付された請求書などは「電子取引データ」です。紙で受け取った請求書や領収書を画像にする場合は「スキャナ保存」に当たります。会計ソフトで最初から作った帳簿や請求書の控えをデータのまま保存する場合は「電子帳簿・電子書類」に当たります。

 

国税庁は、電子取引で受け取ったデータについて、紙に印刷したものだけを保存するのではなく、元の電子データを保存する必要があると案内しています。一方、紙で受け取った書類を必ずスキャンしなければならないわけではありません。紙の保存をデータ保存へ置き換えるなら、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。

 

区分

具体例

保存と紙の扱い

電子で受領・交付

メール添付PDF、ウェブ明細、クラウド請求書

元データを電子取引の要件に沿って保存し、印刷しない

紙で受領・作成

紙の領収書、郵送の請求書、紙の契約書

紙で保存するか、要件を満たしてスキャナ保存する

システムで作成

会計帳簿、システム発行の請求書控え

電子帳簿・電子書類の要件を確認し、紙を作らない

 

この区分をせずに「全部PDFにすればよい」と決めると、電子取引データの原本を失ったり、スキャナ保存に必要な検索や訂正削除履歴の仕組みが不足したりします。まずは書類ごとに、受取時点の形を記録してください。

 

 

紙が減らない原因は、保存より前後の流れにある

 

紙が残る会社では、保管庫だけが問題になっているとは限りません。たとえば、請求書を郵便で受け取り、担当者が開封し、発注担当へ回覧し、上長の押印後に振込担当へ渡す運用では、紙が承認の進捗を示す役割まで担っています。この状態で最後の保管だけをPDFへ変えると、紙とデータが二重になります。

 

領収書も同様です。営業担当が月末に封筒で提出し、経理担当者が台紙へ貼り、内容を確認して会計へ入力する流れでは、スマートフォン撮影を許可するだけでは不十分です。提出期限、必要な入力項目、差戻し方法、原本の扱いを決めなければ、画像と紙の突合に手間が増えます。

 

ペーパーレス化で見るべき範囲は、次の5つです。

 

  • 受取:郵送、メール、ウェブ、店舗など、書類が入ってくる場所

  • 確認:発注事実、金額、取引先、負担部門、インボイス記載事項などを見る人

  • 保存:ファイル名、フォルダ、検索項目、訂正削除の管理

  • 承認:支払可否や経費精算を決める人と期限

  • 記帳・利用:会計入力、支払データ作成、月次確認へつなぐ方法

 

紙を減らす目的は、保管スペースを空けることだけではありません。書類が止まっている場所を見えるようにし、担当者の出社や記憶に依存せず、必要な情報を期限までに処理できる状態をつくることです。

 

どの書類から減らすかを決める

 

最初から全社の紙を対象にすると、例外処理が増え、運用が定着しにくくなります。対象は「件数が多い」「毎月繰り返す」「確認項目が決まっている」「関係者が少ない」書類から選ぶと進めやすくなります。

 

たとえば、毎月50件届く仕入先請求書は効果が見えやすい候補です。受取用メールアドレスへ集め、PDFに取引日・金額・取引先をひも付け、発注担当が画面上で確認する流れを作れば、開封、回覧、ファイリング、検索の手間をまとめて減らせます。

 

一方、重要な契約書、登記関係書類、保証書、行政手続で原本提示が必要になる書類などは、税務上スキャナ保存が可能かどうかだけで廃棄を決めないほうが安全です。契約上の合意、他の法令、取引先との取り決め、将来の紛争時の証拠など、税務以外の観点を担当者や専門家と確認します。

 

優先順位を付ける際は、次のように考えます。

 

  1. 電子で受け取っているのに印刷している書類

  2. 毎月の件数が多く、定型的に処理できる紙

  3. 担当者の机や拠点に滞留しやすい紙

  4. 検索に時間がかかり、問い合わせが多い紙

  5. 例外や原本提示の必要性が高い書類は最後に検討する

 

すでにクラウド会計を利用している場合でも、証憑の入口が紙のままだと効果は限定されます。「クラウド会計を入れるだけでは経理が楽にならないのはなぜ?」では、初期設計や証憑回収の考え方を詳しく説明しています。

 

実務では5つの手順で進める

 

1.紙書類の流れを棚卸しする

 

1か月分の経理業務をたどり、書類名、件数、受取方法、担当者、確認者、承認者、保存場所、保存期間、会計処理との関係を書き出します。書類の束を見るだけではなく、メールボックス、共有フォルダ、会計ソフト、銀行画面まで確認します。

 

「請求書」とひとまとめにせず、売上請求書、仕入先請求書、経費精算の添付書類に分けてください。同じ請求書でも、発行側と受領側で処理が異なるためです。拠点や担当者によって受取方法が違う場合も別行にします。

 

2.受取窓口と提出期限を統一する

 

データ化を成功させるポイントは、保存場所より先に入口をそろえることです。取引先へ請求書の送付先を専用メールアドレスに変更してもらう、ウェブ明細のダウンロード担当を決める、社員の領収書は経費精算システムから期限までに提出してもらう、といったルールを作ります。

 

郵送が残る取引先については、受取担当が決まった場所で開封し、決めた機器と設定でスキャンします。個人のメールやチャットへ送る運用は、退職時の引継ぎや検索が難しくなるため避けます。

 

3.保存要件とファイル管理を決める

 

電子取引データは、改ざん防止の措置を取り、日付・金額・取引先で検索でき、税務調査時に画面や書面へ速やかに出力できる状態を基本として設計します。国税庁は、専用システムを使わない場合の例として、索引簿を作る方法や、日付・金額・取引先を含む規則的なファイル名で特定フォルダへ集約する方法も案内しています。

 

紙をスキャナ保存する場合は、真実性と可視性の要件を確認します。令和8年7月版Q&Aでは、200dpi以上での読み取り、一定のカラー階調、タイムスタンプまたは入力事実を確認できる仕組み、訂正削除履歴、検索機能などが示されています。スマートフォンも要件を満たす入力装置として利用できますが、撮影しただけで完了するわけではありません。

 

同Q&Aでは、要件に沿ってスキャンし、画像と紙の記載が同じで、折れ曲がりなどがないことを確認した後は、入力期間を過ぎた場合などを除き、紙を廃棄できると説明しています。会社独自の確認期間を設ける場合でも、「いつ」「誰が」「何を確認したら」廃棄できるかを明文化します。

 

ファイル名だけに頼ると入力ミスが起きやすいため、件数が増えたら、検索項目、権限、訂正削除履歴を持つ証憑管理サービスも検討します。保存先を選ぶときは、データの書き出し方法、契約終了後の取得方法、バックアップ、障害時の復旧、操作履歴も確認してください。

 

4.承認を紙から切り離す

 

押印や回覧をなくすには、何を見れば承認できるかを決めます。支払いであれば、請求書画像だけでなく、発注内容、納品状況、支払期日、振込先、過去の取引と並べて確認できると判断しやすくなります。

 

少額の定型経費は部門長まで、高額や新規取引先は経営者まで、というように金額や例外条件で承認経路を分ける方法もあります。承認者が不在のときの代理者と、差戻し後の再申請手順も決めます。

 

重要なのは、データ化しても支払実行の権限を一人へ集中させないことです。請求内容を確認する人、振込データを作る人、銀行で最終承認する人を分け、履歴を残します。

 

5.一部で試し、数字を見て広げる

 

まず1部署、1種類、1か月分で試します。処理時間、紙の件数、回収漏れ、差戻し、締め日から月次完了までの日数を開始前と比較します。単にスキャン件数を見るのではなく、経理全体が早くなったかを確認します。

 

不具合があれば、ツールをすぐ替える前に、入口、担当、期限、例外処理のどこで止まったかを調べます。運用が安定してから取引先や部署を増やすと、現場への説明と修正がしやすくなります。

 

経理のペーパーレス化を5段階で考える

 

経理のペーパーレス化 5つの流れ

 

この流れでは、スキャンは3番目ではなく、受取と確認を含む一連の設計の一部です。書類をデータにすることが目的ではなく、後続の記帳や支払いまで止めずにつなぐことが目的だからです。

 

改善前と改善後を具体例で比較する

 

従業員20名、仕入先請求書が月80件、経費精算が月100件ある会社を例にします。

 

改善前は、請求書が本社と2拠点へ郵送され、拠点担当者が社内便で本社へ送ります。経理担当者は請求書を部門別に仕分けし、担当者へ回覧して押印を受け、会計入力後に月別ファイルへ保管します。領収書は月末にまとめて提出されるため、不足や用途不明の確認が翌月へ持ち越されます。

 

改善後は、取引先へ専用メールの利用を依頼し、郵送分だけ本社でスキャンします。受け取ったデータには日付、金額、取引先、部門を登録し、発注担当が画面上で内容を確認します。承認済みのデータだけを振込準備と会計処理へ回し、差戻しは理由と期限を残します。領収書は社員が都度撮影し、用途と部門を入力します。

 

この変更により期待できるのは、ファイリング時間の削減だけではありません。未提出書類と承認待ちを一覧で確認できるため、締め日前に催促できます。経理担当者が休んでも、別の担当者が状況を確認しやすくなります。ただし、取引の事実、費用負担部門、支払可否、例外経費の承認は人が行います。

 

改善効果は会社の取引件数、書類の状態、利用サービス、社内ルールによって異なります。導入前に2週間ほど作業時間を計測し、導入後も同じ条件で比較すると、単なる印象ではなく効果を判断できます。

 

自動化・外注できる範囲と社内に残す役割

 

ペーパーレス化は、すべてを社外へ任せることでも、すべてを自動化することでもありません。定型作業をツールや経理代行へ移し、会社固有の判断と最終承認を社内に残すと、責任の所在が明確になります。

 

工程

自動化・外注しやすい部分

社内に残す主な判断

書類の受取

専用メールへの集約、郵送物のスキャン、OCR読取

取引先へ送付方法を依頼する判断

内容登録

日付・金額・取引先の読取、ファイル整理

発注・納品の事実、負担部門、用途の確定

保存

検索項目の付与、履歴管理、バックアップ

保存方針、アクセス権、紙を廃棄する条件

承認

承認依頼、期限通知、差戻し履歴

支払可否、例外経費、高額取引の承認

記帳・支払準備

仕訳候補、振込データ、未処理一覧の作成

科目・税区分の例外、銀行での最終承認

月次確認

証憑と仕訳の突合、未処理リスト作成

数値の確定、経営判断、税理士への相談

 

経理代行へ依頼する場合は、「スキャン1枚いくら」だけで比較せず、どこから受け取り、どこまで確認し、差戻しを誰が行い、月次締めまで何日かかるかを確認します。「経理代行とは、具体的に何をしてくれるサービス?」も、外注できる業務の整理に役立ちます。

 

社内では、取引の正当性と支払可否を判断できる責任者を決めます。外部の担当者は請求書に書かれた内容を読めても、その発注が本当に行われ、納品され、会社として払ってよいかまでは判断できないためです。

 

ペーパーレス化のメリットと注意点

 

主なメリットは、検索時間の短縮、保管場所の削減、複数拠点や在宅からの確認、承認状況の見える化、引継ぎのしやすさです。証憑と仕訳をひも付ければ、月次確認や税理士とのやり取りも進めやすくなります。

 

一方、保存先を増やし過ぎると、「メールにも、共有フォルダにも、会計ソフトにもある」という重複が起きます。正本として扱う保存先を決め、途中のファイルをいつ削除するかも定めます。個人端末への保存や、共用IDの利用も避けます。

 

アクセス権は、全社員が全書類を見られる設定にしないことが基本です。給与、個人の口座情報、取引条件など、書類ごとに閲覧範囲を分けます。多要素認証、端末の更新、退職時のアカウント停止、バックアップ、事故時の連絡先も準備します。

 

IPAは、2026年3月に「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版」を公開し、クラウド利用、ランサムウェア、サプライチェーンを含む対策を示しています。保存サービスの選定と社内ルール作りでは、IPAの中小企業向けガイドも確認してください。

 

導入前後に確認するチェックリスト

 

次の項目を確認し、「いいえ」が多い部分から整えます。

 

  • 書類ごとに、紙で受け取るか電子で受け取るかを把握している

  • 電子で受け取った請求書や領収書を印刷せず、元データで保存している

  • 紙をスキャナ保存する場合の要件と、廃棄条件を確認している

  • 日付・金額・取引先で検索できる

  • 正本となる保存先が一つに決まっている

  • 訂正や削除の履歴、または改ざん防止の事務処理規程がある

  • 受取、内容確認、承認、支払実行の担当が決まっている

  • 承認者の不在時と差戻し時の手順がある

  • 個人別ID、多要素認証、退職時の停止手順を用意している

  • データの書き出し、バックアップ、障害時の復旧方法を確認している

  • 原本提示が必要な可能性のある書類を税務以外の観点でも確認している

  • 導入前後の処理時間、未提出件数、月次完了日を比較している

 

チェックリストは一度作って終わりではありません。取引先、担当者、会計ソフト、保存サービスが変わったときに更新します。月次締め後に未処理一覧を確認し、どの入口や承認で滞留したかを振り返ると、運用が形骸化しにくくなります。

 

よくある質問

 

紙の請求書や領収書は、スキャンしたらすぐ捨ててもよいですか?

 

電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たし、画像と紙の記載が同じで、折れ曲がりなどがないことを確認した後は、入力期間を過ぎた場合などを除き、紙を廃棄できると国税庁は説明しています。ただし、税務以外の法令、契約、保証、紛争対応で原本が必要な場合もあります。書類区分と廃棄条件を決め、迷う書類は専門家へ確認してください。

 

メールで届いた請求書を印刷して保存すればよいですか?

 

電子で受け取った取引データは、原則として電子データのまま保存します。印刷した紙だけでは電子取引データの保存に代えられません。メール本文が取引情報を含む場合は、添付ファイルだけでなく必要なメール情報も保存対象になることがあります。

 

高価な文書管理システムがないと始められませんか?

 

必ずしも最初から高価なシステムが必要とは限りません。国税庁は、電子取引データについて、索引簿や規則的なファイル名を使う簡易な検索方法も案内しています。ただし、件数や担当者が増えると、手入力、権限、履歴、バックアップの管理が負担になります。小規模な試行で件数と例外を把握し、その後に必要な機能を選ぶ方法が現実的です。

 

スマートフォンで領収書を撮影してもよいですか?

 

スマートフォンも、要件を満たせばスキャナ保存の入力装置に含まれます。画像が不鮮明、端が欠けている、裏面を撮っていない、必要な解像度を満たさないといった状態は避けなければなりません。撮影設定、提出項目、確認担当、差戻し、保存先まで決めます。

 

紙を減らせば、経理担当者は不要になりますか?

 

紙の回収、並べ替え、ファイリングは減らせますが、取引の事実、支払可否、費用負担部門、例外取引、月次数値の確定など、人の判断は残ります。定型作業を自動化・外注し、社内は判断と承認に集中する役割分担が必要です。

 

リモート経理と同時に進められますか?

 

進められます。紙の入口と承認をデータ化すると、経理担当者が出社しなければ処理できない作業を減らせます。ただし、権限や銀行の最終承認まで設計する必要があります。具体的な順序は「経理業務をリモート化するには、何から始めるべき?」で解説しています。

 

まとめ

 

経理の紙書類を減らすには、紙を一斉にスキャンするのではなく、書類の生まれ方を分け、受取、確認、保存、承認、記帳までを一つの流れとして整えることが大切です。電子で受け取ったデータと、紙からスキャンしたデータでは保存ルールが異なります。

 

まずは毎月件数の多い請求書や領収書から、1部署・1種類で試してください。受取窓口、保存先、検索項目、承認者、紙の廃棄条件を決め、処理時間や月次完了日を導入前後で比較します。ツールの導入だけでなく、社内に残す判断と外部へ任せる作業を明確にすることで、継続しやすい運用になります。

 

経理のペーパーレス化を相談したい方へ

 

品川・横浜 経理代行ステーションでは、現在の書類の流れを確認し、クラウド会計、証憑回収、承認フロー、経理代行を組み合わせた運用を検討しています。紙をどこから減らせばよいか、社内に残す作業と外注できる作業を整理したい場合は、無料相談をご利用ください。

 

※本記事は2026年9月7日時点の公的情報をもとにした一般的な解説であり、個別の税務・法務判断を保証するものではありません。実際の保存方法や原本廃棄の可否は、書類の内容、利用システム、適用法令、契約条件によって異なります。税理士、弁護士、所轄税務署などの専門家・関係機関へご確認ください。

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