【要注意】経理のクラウド化でよくある失敗例とその回避策まとめ
- 恵 菅原
- 10月20日
- 読了時間: 12分
はじめに|なぜ経理のクラウド化で“失敗する会社”が後を絶たないのか

近年、「経理のクラウド化」を進める企業が一気に増えています。
テレワークへの対応、ペーパーレス化、そして人手不足への対策として──クラウド会計や経費精算システムの導入は、もはや当たり前の流れになりつつあります。
ところが実際には、「導入したけれど全然ラクにならなかった」「現場が混乱して逆に仕事が増えた」という声も少なくありません。
クラウド化は“魔法のツール”ではなく、運用体制や業務設計が整っていなければ失敗する可能性もあるのです。
経理のクラウド化を成功させるには、「何を、どのように変えたいのか」を明確にし、ツールに業務を合わせるのではなく、業務フローをクラウドに最適化する発想が欠かせません。
この記事では、実際の中小企業で起きがちな「経理クラウド化の失敗例」をもとに、同じ轍を踏まないための対策を解説します。
これから導入を検討している方も、すでに運用を始めている方も、ぜひ一度チェックしてみてください。
第1章|目的を見失う:ツール導入がゴールになってしまう
クラウド化の失敗で最も多いのが、「導入すること自体が目的になってしまう」ケースです。
たとえば、
「DXを進めろ」と上層部から指示され、とりあえず会計ソフトをクラウドに変えた
営業部や人事部が使っているから、とりあえず同じツールを導入した
こうした“なんとなく導入”は、経理の現場に混乱を招く典型例です。
本来、経理のクラウド化は「どの業務を効率化したいのか」「どんな成果を出したいのか」を明確にしたうえで行うべきプロジェクトです。
しかし、その目的設定があいまいなまま導入が進むと、
現場では「入力項目が増えた」「操作が難しくて誰も触れない」といった不満が噴出します。
結果として、「せっかく高いお金を払って導入したのに、誰も使いこなせていない」状態に。
クラウド化どころか、むしろ業務負担が増え、ミスが増える悪循環に陥ってしまいます。
✅回避策:導入前に“経理業務の棚卸し”を行う
クラウド化を成功させる第一歩は、「現状の業務を見える化する」ことです。
どの作業に時間がかかっているのか
紙やExcelでやっている部分はどこか
誰が、どのタイミングでチェックしているのか
これらを洗い出すことで、「どこをクラウド化すべきか」「どのツールが合うのか」が初めて見えてきます。ツールありきではなく、課題ありきの導入。それが、経理クラウド化で失敗しないための基本です。
第2章|入力や承認フローが複雑になり、かえって業務が遅延
クラウド化によって本来は「入力の手間を減らし、スピードアップ」できるはずの経理業務。
ところが実際には、「承認フローが複雑になって、処理が遅くなった」「入力ルールが増えてミスが増えた」といった声が多く聞かれます。
たとえば、
経費精算をクラウドに移行したものの、上司・部門長・経理の三重承認が必要になり、処理が停滞
勘定科目やプロジェクトコードの選択ルールが複雑で、入力ミスが頻発
紙の請求書チェックが習慣として残り、結局「クラウド+紙」の二重管理に
このような事態は、「システムに業務を合わせようとした結果」生まれる典型的な落とし穴です。
クラウド化では、これまでの“紙ベースの流れ”をそのまま再現しようとすると、どうしてもムダが生じます。ワークフローを根本から見直し、ツールに合わせて業務を再設計する発想が欠かせません。
✅回避策:導入前に“現場の声”を取り入れ、ワークフローを設計する
経理クラウドを導入する際にありがちなのが、「経営層やシステム担当だけで決めてしまう」こと。
しかし、実際に日々入力や承認を行うのは現場の担当者です。
現場の理解と納得がないまま新システムを導入しても、使いこなされず形骸化してしまいます。
導入前にやるべきは、「実際にどんな手順で処理しているか」を現場ヒアリングし、
承認者の数を適正化する
入力画面や項目を最小限にする
自動仕訳や自動承認ルールを積極的に活用するといった“現実的な設計”を行うことです。
また、導入初期は「ルールを決めすぎない」こともポイント。
最初から完璧を目指すより、小さく試して運用を微調整していくほうが、定着率は高くなります。
第3章|システム間連携がうまくいかない(会計ソフト・勤怠・経費精算など)
クラウド化を進めるうえで、意外と多いのが「システム同士の連携トラブル」です。
会計ソフト、勤怠管理、経費精算、請求書発行──
それぞれが便利なクラウドサービスであっても、連携がうまくいかなければ意味がありません。
たとえば、こんな声がよく聞かれます。
「freeeと経費精算システムのデータ形式が合わず、CSVを手作業で修正している」
「勤怠システムと給与ソフトの締め日が違っていて、毎月ズレが出る」
「請求書発行システムを導入したら、入金消込処理が二重登録になった」
クラウドツールは、それぞれが“自社最適”の仕様で作られているため、他社製品との連携には思わぬ制約があります。
導入後に「思ったより自動化できなかった」と判明してからでは遅いです。
✅回避策:導入前に「どこと・どの形式で」連携できるかを確認する
システム連携の失敗を防ぐには、導入前の下調べが肝心です。
とくに以下の3点は、必ず確認しておきましょう。
API連携が可能かどうか
→ リアルタイムでデータを同期できるか、またはCSV出力だけなのか
対応しているファイル形式・文字コード
→ “CSV形式対応”と書かれていても、文字コード(UTF-8/Shift-JIS)の違いで取り込めないことも
データの更新タイミング・連携方向
→ 一方通行(例:経費→会計のみ)なのか、双方向に更新されるのか
また、ツール選定時には“連携実績”も重要です。
導入事例やユーザーレビューで「どの組み合わせが実際に動いているのか」を調べておくと、後悔を減らせます。
💡補足:クラウド導入の相談相手を間違えない
ありがちなのが、「ベンダーごとに勧められたツールを個別に導入した結果、統合できなくなった」というパターン。
経理クラウド化はツール単体の問題ではなく、“業務全体の設計”の問題です。
本来は、会計・労務・経費などを横断的に見られる専門家と一緒に進めるのが理想です。
第4章|セキュリティ・権限設定を軽視してトラブルに
クラウド化で見落とされがちなのが、「セキュリティと権限管理」です。
これまで経理データは、社内サーバーや限定されたパソコンでしか扱えなかったため、物理的に守られていました。
しかし、クラウド化によって“誰でも・どこからでもアクセスできる”ようになると、便利さの裏に新しいリスクが生まれます。
たとえば、こんな事例があります。
権限設定が甘く、経理担当以外の社員が給与明細や取引先情報を閲覧できた
退職者のアカウント削除を忘れ、外部からログインされた
在宅勤務中の私用PCからクラウドにアクセスし、情報漏えいにつながった
こうしたトラブルは、「セキュリティはIT部門の仕事」と思い込んでいる企業ほど起こりやすいもの。
経理のクラウド化では、“誰がどの情報にアクセスできるか”を明確に管理する意識が欠かせません。
✅回避策:アクセス権限と管理ルールを「最初に」決める
セキュリティ対策というと難しく聞こえますが、まずは次の3点を徹底するだけでも、リスクを大幅に減らせます。
権限を最小限にする(最小権限の原則)
経理担当者でも、全員がすべての機能にアクセスできる必要はありません。 入力担当・承認担当・経理責任者など、役割ごとに権限を分けることで、誤操作や情報漏えいを防げます。
退職・異動時のアカウント管理ルールを明確にする
担当が変わるたびに権限を引き継ぐのではなく、「削除→新規発行」を徹底しましょう。 小さな会社ほどここが曖昧になり、意図せぬアクセスが発生しやすくなります。
端末・通信の安全性を確保する
在宅勤務では、共有Wi-Fiや私物PCの利用がリスクになります。 クラウド会計サービスの多くは二段階認証やアクセス制限機能を備えているため、必ず設定しておくことが重要です。
💬クラウド化で「経理の守り」を強化する
クラウド化というと「攻めのDX」「効率化」のイメージが強いですが、同時に“守りの仕組み”も強化しなければなりません。
特に経理データは企業の信用を左右する情報です。もし万一の漏えいが起これば、顧客との関係や社内の信頼が一瞬で崩れることもあります。
セキュリティはコストではなく、“経営のリスクヘッジ”。ここに意識を向けられる企業こそ、クラウド時代に本当に強い組織だといえるでしょう。
第5章|「導入したけど使いこなせない」属人化・放置問題
クラウド化で最もよく聞く悩みのひとつが、
「結局、使いこなせていない」「担当者しか操作できない」――というものです。
最初は意欲的に始めたものの、
・設定やカスタマイズが複雑で、他の社員が触れない
・操作ミスを恐れて、結局Excelで処理してしまう
・運用を把握していた担当者が退職し、ブラックボックス化
こうしたケースは少なくありません。
クラウド化はツールを導入して終わりではなく、運用を継続できる体制づくりが肝心です。どんなに高機能なツールでも、社内に使いこなせる人がいなければ意味がありません。
✅回避策①:導入時から「教育」と「マニュアル整備」をセットで考える
システム導入の現場でよく見られるのが、「説明会を一度やって終わり」になってしまうパターンです。
しかし、実際には運用を始めてから出てくる疑問の方が多いもの。
そのため、運用初期こそサポート体制が必要です。
操作マニュアルを社内共有ドライブにまとめる
定期的に質問会や研修を実施する
管理画面の更新情報をチェックして反映する
こうした“小さな仕組み”を地道に積み重ねることで、ツールが社内に根づきやすくなります。
✅回避策②:属人化を防ぐ「役割分担」と「外部サポート」の活用
経理クラウドは便利な反面、設定・管理・更新などの専門的な作業が発生します。
この部分をすべて社内で抱え込むと、結局「わかる人しか触れない」状態になり、属人化を招きます。
初期設定や連携まわりは専門知識のある外部パートナーに任せる
定常業務(仕訳・支払処理など)はクラウド対応の経理代行に委託する
こうすることで、社内は本来のコア業務(経営判断や数字分析)に集中できます。
ツールを「便利な箱」にせず、運用を支える仕組みとして活かすことがポイントです。
💡クラウド化の成功とは、“使い続けられる”こと
クラウド化は、導入そのものよりも「継続」が難しい取り組みです。
システムが変われば人の習慣も変わり、そこに抵抗が生まれます。
その抵抗をどう支え、どう運用に定着させるか。
ここが成功企業と失敗企業を分ける最大のポイントです。
第6章|クラウド化の“成功パターン”に学ぶ:うまくいく会社の共通点
ここまで見てきたように、経理クラウド化の失敗は「ツール」よりも「運用設計」に原因があります。
では逆に、クラウド化をうまく軌道に乗せている会社には、どんな共通点があるのでしょうか。
実際にharborsが支援してきた中小企業やスタートアップの事例から見ると、成功している会社には次の3つの特徴があります。
① 経営者・現場・システム担当が“一体”で動いている
クラウド化の初期段階から、経営者が「数字の見える化」を目的として関わっている企業は強いです。
経理だけに任せず、経営層・現場担当・システム担当が定期的に進捗を共有することで、「どんなデータが経営判断に役立つのか」という視点がブレません。
結果として、経理システムが“記録のためのツール”ではなく、“経営の意思決定を支える武器”に変わっていきます。
② クラウドに合わせて業務フローを“作り直す”覚悟がある
失敗する会社ほど、「今までのやり方をそのままクラウドで再現しよう」とします。
一方、成功する会社は、ツール導入をきっかけに業務そのものを再設計しています。
紙の伝票を廃止し、データ承認へ一本化
経費申請をスマホ入力に変えて、現場の負担を軽減
月次決算の流れを見直して、締め日を前倒し
このように「業務の姿を変える勇気」を持てるかどうかが、クラウド化成功の分かれ道です。
③ 経理担当を“伴走支援”できる外部パートナーを活用している
クラウド会計や経費精算ツールは、導入後の設定・アップデート・トラブル対応が頻繁に発生します。
社内に専門人材がいない場合、すぐに壁にぶつかることも。
成功している企業ほど、早い段階で外部の経理代行・クラウド導入支援業者と連携しています。
ツールの操作だけでなく、「経理業務そのものをどう効率化するか」という視点からサポートを受けられるため、現場の負担を最小限に抑えつつ、安定した運用を実現しています。
💬 harborsが見てきた“クラウド導入のリアル”
経理のクラウド化は、最初の一歩が難しく見えるかもしれません。
しかし、正しく設計すれば必ず成果につながります。
実際、harborsではクラウド会計(freee・マネーフォワードなど)の導入支援から、日々の仕訳・請求書処理・月次決算までを一気通貫で代行し、「クラウド化したのにうまく回らない」というお悩みを数多く解決してきました。
経理のクラウド化は、ITプロジェクトではなく“経営改革”です。自社だけで抱え込まず、経理のプロに伴走してもらうことで、クラウドの本当の価値が発揮されます。
まとめ|クラウド化の失敗は“ツール”ではなく“人と業務設計”が原因
経理のクラウド化は、いまやどの企業にとっても避けて通れないテーマです。
しかし、導入後に「思っていたほど効率化できない」「結局使いこなせていない」という声が後を絶ちません。
その多くは、ツールそのものの問題ではなく、人・ルール・業務設計の問題です。
クラウドは万能ではなく、使う人・運用する仕組みが整ってはじめて力を発揮します。
💡失敗を防ぐ3つのポイントをおさらい
目的を明確にし、ツール導入をゴールにしない
現場の声を反映し、シンプルなフローを設計する
教育・権限・セキュリティを運用初期から整える
この3点を意識するだけで、クラウド化の成果は大きく変わります。
💬 harborsからのメッセージ
私たちharborsは、経理代行のプロとして、クラウド導入の「設計から運用」までを伴走支援しています。
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