“一人経理”のリスクとは?中小企業が直面する5つの落とし穴と対策
- 恵 菅原
- 5月26日
- 読了時間: 10分

1. はじめに|「一人で経理を回している」それ、実は“リスク資産”かもしれません
「経理担当はベテランの○○さんが1人で回してくれているから大丈夫」
そう思っていませんか?
一人経理体制は、たしかにコスト面では効率的に見えます。
ですが、その裏には“業務停止リスク”や“情報の属人化”といった見えないリスクが潜んでいます。
経営に必要なのは「今うまくいっているか」ではなく、
「明日トラブルが起きたとき、会社が止まらないか」。
この記事では、一人経理体制が抱える代表的なリスクと、企業が取るべき対応策をご紹介します。
2. 一人経理体制とは?中小企業の“あるある”な経理の姿
「うちは人手が足りないから、経理は○○さん一人に任せている」
これは中小企業ではごく当たり前の光景です。
しかも経理担当者は、ただ帳簿をつけるだけではありません。
実際には、こんなにも多岐にわたる業務を担っています:
🔸 記帳・仕訳 → 領収書の入力、売上・経費の仕訳処理、科目振り分けなど
🔸 請求書・見積書の作成 → 顧客ごとに締日・フォーマットが異なり、ミスが許されない
🔸 売上管理・入金確認 → 入金遅れや未入金を確認し、営業部門と連携
🔸 支払業務・振込作業 → 月末の大量処理、仕訳と突合、ネットバンキング操作など
🔸 給与計算・年末調整・社会保険手続き → 従業員対応やマイナンバー管理、法改正の反映も必要
🔸 月次・年次決算のとりまとめ → 税理士対応や資料準備、試算表の作成まで
そのうえで、「電話番」「備品発注」「社内行事の取りまとめ」など、経理+総務+庶務の三役をこなしている人材も少なくありません。
📌 表面上は“問題なく回っている”ように見えてしまう
一人で長年担当していると、本人も業務に慣れ、ミスも少なく見えることがあります。
でもそれは、
「○○さんじゃないと分からない」「あの人がいないと請求書が出せない」
という属人化が進んでいるサインです。
📉 属人化の先にあるのは、業務のブラックボックス化
担当者が不在だと何も進まない
やり方が口頭でしか伝わっていない
手順がマニュアル化されていない
「毎月こうしてるから…」で済ませている
こうした状態では、問題が起きても誰も気づかず、代替もできません。
✅ コスト削減のつもりが、逆に“経営リスク”に
経理を一人に任せているのは、
「人件費を抑えたい」「社内にそこまで業務がないから」といった合理的判断からかもしれません。
しかし、一人が辞めた瞬間にすべてが止まる体制は、コスト以上のリスクを抱えていることになります。
「うちの経理も、今まではなんとかなっていた」
でも、それは“運がよかった”だけかもしれません。
経営者として、「もしもの備え」ができているか、今こそ見直してみませんか?
3. 一人経理が抱える5つのリスク
リスク①:突然の退職で業務が完全にストップする
「すみません、今月末で辞めさせてください」
そんな一言が、経理業務のすべてを止めてしまう引き金になる可能性があります。
特に多いのは、
有給消化に入り、最終出社日が急に早まるケース
「引き継ぎ資料を作る時間がない」と言われ、対応できない
退職代行からの連絡で、会社との連絡が途絶える
経理業務は、「人が辞めたらすぐに代替できる業務」ではありません。
たとえ採用がうまくいっても、引き継ぎの準備や業務理解には時間がかかります。
結果的に、
支払処理が遅れる
給与計算ができない
税理士への提出物が滞る
といった「信用・キャッシュフローに直結するトラブル」が起きかねません。
リスク②:経営判断に必要な数字が見えない
「ウチの今月の利益、いくらですか?」
そう聞かれて即答できない場合、それは数字が“機能していない”状態です。
一人経理では、日々の業務に追われて「数字を整える時間」が足りません。
その結果、
月次決算が出るのは翌月末〜翌々月
現金残高はわかっても、利益の状況が不明
計画と実績の差異分析がされていない
といった事態に。
数字が曖昧なままでは、新規投資・資金調達・採用・販路拡大など、重要な経営判断が“勘”頼りになってしまいます。
経営に必要なのは「記録」ではなく、**“判断材料としての数字”**です。
リスク③:不正やミスに気づけない
誰もが「うちの経理は信頼しているから大丈夫」と言います。
ですが、不正は「信頼していなかったから」ではなく、“チェック機能がなかったから”起きるのです。
ありがちなケースとしては、
仮払金の精算が本人任せで内容確認されていない
複数名で承認すべき支払いが、1人で完結している
現金出納帳が長年ノーチェックのまま
こうした構造が、不正の余地や偶発的ミスの温床になります。
さらに、経理担当が体調不良や家庭の事情などで**“注意力が落ちる”タイミング**も見逃せません。
問題が起きてからでは遅いのです。二重チェック、職務分掌、ログ管理…“仕組み”で支える体制づくりが求められます。
リスク④:法令・制度変更への対応が追いつかない
年々複雑化する経理関連の制度変更に、1人で対応するのは至難の業です。
例えば、
インボイス制度(適格請求書の保存義務)
電子帳簿保存法(デジタルデータの保存ルール)
雇用保険・社会保険の法改正
これらの制度変更に対し、
「いつから?」「ウチは対象?」「何を準備すれば?」と情報収集に追われるだけで、実務の時間が削られます。
しかも、“対応が遅れたからといって待ってはくれない”のが法律の怖さ。
ペナルティや信用失墜リスクも含めて、業務のキャパシティを超える時点で“制度対応=経営リスク”になってしまいます。
リスク⑤:IT・システムが属人化する
一見、便利に見える“担当者任せのクラウド管理”。
でも、ログインIDやパスワード、操作マニュアルがすべてその人の頭の中にある状態になっていませんか?
このような属人化が進んだ環境では、退職や長期休職が発生した瞬間に、
会計ソフトにログインできない
振込手続きがわからない
電子申請ができない
といった“詰み状態”になります。
デジタル化=業務効率化にはなりません。
「誰でも使える状態」にすることが、IT活用の前提です。
4. もし今、経理担当が辞めたら?確認したいチェックリスト
「急に辞めるなんて、うちは大丈夫だろう」
そう思っていた企業でも、ある日突然、経理担当者がいなくなることは実際に起こります。
では、そのとき本当に業務は回るのでしょうか?
以下のチェックリストは、**経理の属人化度を測る“セルフ診断”**として使えます。
今のうちに確認してみてください👇
📋 経理体制セルフチェック
✅ 請求書の発行フローは、経理以外の社員も理解しているか?
✅ ネットバンキングのID・パスワードを会社で一元管理しているか?
✅ 月次決算の作成手順やスケジュールは文書化されているか?
✅ 給与計算のルール(手当・控除など)は、複数人で把握しているか?
✅ 経費精算や立替処理のルールが明文化されているか?
✅ 会計ソフトの操作マニュアルが存在しているか?
✅ 税理士や社労士との連携内容を、経営者自身も把握しているか?
✅ 社会保険や年末調整などの申請手順が残されているか?
上記の項目に3つ以上「×」がついた方は要注意。
その体制はすでに「回らないリスク」をはらんでいます。
💥「詰む」までの流れは意外と早い
月初:請求書が出せない → 売上が確定できない
月中:給与の締日が来る → 計算方法が不明
月末:支払日が迫る
→ ネットバンキングにログインできない
翌月:試算表が出ない
→ 税理士が動けない → 決算が遅延
たった1人が抜けただけで、“すべての歯車が止まる”可能性があるのが経理の怖さです。
🧯今からでも遅くない、“見える化”を
まずは小さなところから始めましょう。
操作手順のメモを残す
経理資料をクラウドに保存
経営者自身が月次の流れを把握する
属人化の解消は一朝一夕ではできませんが、
「明日辞められても会社が止まらない」状態を作ることが、真の経営管理です。
「まさかうちの会社が…」という事例は、実際に何社も見てきました。
だからこそ、今のうちにリスクに気づいていただきたいです。
5. 体制を見直す3つの選択肢
「このまま一人経理で続けていていいのか…」
リスクに気づいた今、取るべき選択肢は主に3つあります。
どれを選ぶかは、会社の規模・業務量・人材状況によって異なります。以下で、それぞれのメリット・注意点を整理してみましょう。
✅ 選択肢①:社内で複数人体制を構築する
「経理担当を増員して2人体制にする」これは最もシンプルな属人化対策の一つです。
メリット:
属人化の回避、ダブルチェック体制が可能に
業務分散による精神的・物理的な負担の軽減
社内にノウハウが蓄積され続ける
注意点:
採用コストがかかる(給与・社会保険など)
教育やマニュアル整備など、立ち上げに時間が必要
人材不足の市場では「すぐに採用できない」ことも多い
👀 こんな会社におすすめ→ 今後の事業拡大を見据えて社内体制を強化したい企業
✅ 選択肢②:社内で業務を分担する
「経理担当は1人のままだけど、支払い業務は営業事務が担当」「請求書発行だけは別の社員に教えておく」など、業務単位で分担を進める方式です。
メリット:
採用不要でコスト負担を抑えられる
業務の見える化と属人化回避につながる
社員間での相互理解が進む
注意点:
他部署の負担が増える可能性
経理の専門性が必要な場面では対応が難しい
業務の重複やミスのリスクが生じやすい
👀 こんな会社におすすめ→ 緊急的にリスクを分散したいが、新たな採用までは踏み出せない企業
✅ 選択肢③:経理代行を導入する(外部委託)
経理業務を専門業者にアウトソースする方法です。近年、全国的に利用が増えており、柔軟な形で依頼できるのが特徴です。
メリット:
記帳・請求・給与などをプロに丸ごと任せられる
最新制度への対応や法令遵守もおまかせ
業務マニュアル・体制構築もサポートしてくれる
月額制でコストが明確、採用より安価な場合も
注意点:
社内との連携体制(資料提出など)を整える必要がある
自社で完結できる体制を築くわけではない(外部依存)
👀 こんな会社におすすめ
→ 小規模で経理リスクを最小化したい、すぐに体制を整えたい企業
→ 採用にコストも時間もかけられない企業
💡 経営判断のポイントは「何を守りたいか」
社内ノウハウを育てたいなら「増員・分担」
業務の安定性とスピード重視なら「外部委託」
大切なのは、**「いまうまく回っているか」ではなく「明日も止まらないか」**という視点で、体制を見直すことです。
6. Harborsのご紹介|“一人経理リスク”の解消は、外部のプロにお任せを
株式会社Harborsでは、中小企業の経理業務を**まるごとサポートする「経理代行ステーション」**を運営しています。
記帳代行
請求・支払業務の管理
給与計算
月次・年次決算の対応
税理士・社労士との連携まで
経験豊富な専門スタッフが対応し、全国どこからでもオンラインで依頼可能です。
💬 現在、無料相談を実施中
7. まとめ|一人経理は“危機の芽”を内包している
「いまのところ何とか回っている」
その状態こそ、会社のリスク耐性を試すサインかもしれません。
経理担当者が突然辞める前に。
属人化のしわ寄せが経営を圧迫する前に。
今こそ、経理体制を見直すタイミングです。大きなトラブルが起きる前に、小さな一歩を踏み出しませんか?
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