経理が急に辞めると、会社はこうなる|退職代行から始まった1日の全記録
- 恵 菅原
- 5月27日
- 読了時間: 10分

【9:15】退職代行からの電話
月曜日の朝、電話が鳴った。
着信表示は見慣れない番号。
営業電話かと思っていた。
でも、次の一言で空気が変わった。
「お世話になっております。○○退職代行センターの□□と申します。
本日付で、御社の松尾さんが退職される旨を、本人より承っております。
ご本人からの希望により、今後のご連絡ややりとりは、すべて当社が窓口となります」
名乗ったのは、経理担当者の松尾さん…
ではなく、彼の代わりに話す“退職代行”の担当者。
言葉は丁寧だったけれど、その一報が告げていたのは、“もう本人と直接連絡は取れません”という事実だった。
先週まで普通にやり取りをしていたはずの経理担当から、まさかこんな形で「退職」の連絡を受け取るなんて。
でもそれは、**実際に中小企業で起きている“現実”**なのです。
【9:20】社内が凍る|“まさか”が現実に
「松尾さん、来てないよね?」
「今日、●●社の振込日じゃなかったっけ?」
徐々に社内に広がる不安。
いつも朝一番に着席していた松尾さんの席は空いたまま。
その日が締め日の業務も、経費精算も、まるで“止まった時計”のように動きません。
銀行振込のパスワードはどこ?
給与計算ソフトのログインってどうなってたっけ?
税理士とのやりとり、全部松尾さん任せだったよな…
ほんの数時間前まで「いつも通り」だったはずの業務が、突然動かなくなる。これが「経理が急に辞める」という現実です。
【10:00】まずはこの業務から止めない|初動リスト
深呼吸して、いま“今日中に止めてはいけない業務”を整理します。
以下のチェックリストは、緊急時の行動マニュアルになります。
🔐 1. 銀行・会計・給与ソフトのアクセス確認
銀行のインターネットバンキングのログインID・パスワード
二段階認証の連絡先(電話番号・メールアドレス)が元経理のままではないか
会計ソフト(弥生・freee・マネーフォワード等)のログイン権限
給与計算ソフトや年末調整ソフトの利用状況・ログイン方法
📂 2. 支払い・入金まわりの予定確認
今日/今週中の支払予定一覧(仕入先、外注費、家賃、水道光熱費など)
請求書の発行・送付状況(未送付分の確認)
取引先への入金予定とズレていないか
未回収の売掛金、督促状況
👥 3. 社内共有の緊急体制づくり
上長や役員、各部門に現状を報告(混乱を防ぐ)
社員からの経費精算/給与に関する問い合わせ窓口の一時対応
重要な社内支払い(通勤費・賞与・福利厚生費など)の保留判断
📞 4. 社外専門家への連絡・調整
顧問税理士・社労士への「経理担当退職」の連絡と引き継ぎ調整
外注先(アウトソースしている支払処理・記帳代行など)がある場合は連絡
助成金・補助金・入札など、申請中業務がないか確認
📈 5. 「資料」や「共有フォルダ」の所在確認
経理資料がどこに保管されていたか(ローカルPC/共有ドライブ/紙)
月次決算、キャッシュフロー表、帳簿記録、領収書スキャンデータなど
総務や他部署と連携して業務の“断絶ポイント”を洗い出す
📋 6. 契約・保険・法定提出物のチェック
労働保険料/雇用保険/健康保険の納付状況
社員の社会保険手続き・住民税処理の途中案件がないか
融資返済日、リース料支払日など定期引落しの確認
📌 ポイント:
この時点では「引き継ぎがない前提」で動くのが鉄則。
完璧を目指さず、**“止めてはいけないものから順に止めない”**という優先思考がカギになります。
この時点で「誰も分からない」「紙でもデータでも残ってない」と気づいたら、外部の専門家を早急に頼る判断が必要です。
【13:00】見えてきた“属人化”のツケ
松尾さんは、誰よりも勤勉で責任感が強く、黙々と経理業務をこなしてくれていました。
「松尾さんに聞けば分かる」
「あの人がいるから大丈夫」
――社内ではそんな信頼が常識になっていたのです。
でも、信頼は時に“依存”と紙一重。
彼の不在で気づいたのは、社内に“共有されていない業務”がいかに多いかという現実でした。
📌 どれだけの業務が“ブラックボックス化”していたか?
銀行のログイン情報が松尾さんのPCとスマホにしかなかった
会計ソフトのマスターデータはローカル保存、共有フォルダには未反映
給与計算・保険手続きのスケジュールが本人の頭の中にだけ
売上・原価の試算表はすべてExcelベースで「松尾流」、他の誰にもわからない
税理士とのやりとりがすべて個人メールアドレスからで、履歴が追えない
💥 属人化の“実害”が発生するのは、まさにこの瞬間
たとえば…
月末の支払いができない → 仕入先や外注先の信用を失う
社員の給与計算が遅れる → 社内の信頼・モチベーションが下がる
経費精算が滞る → 社員が立て替えを嫌がり業務が回らない
税理士が手を出せない → 決算遅延、納税トラブルのリスク
属人化は「うまく回っている時」には気づけません。
でも、1人が抜けた瞬間に“会社の血流”が止まる危険性を、私たちはこの日、痛感したのです。
🧭 今だからできる棚卸しチェックリスト
☐ 会社の通帳や印鑑はどこに保管されていますか?
☐ 会計・給与・経費のソフトにログインできますか?
☐ 支払先・請求先のリストは最新ですか?
☐ 社内の誰かが代替対応できる体制になっていますか?
📣 ヒトが抜けたときに“業務”が抜けないこと。それが、これからの経理体制の最低条件なのかもしれません。
【13:00】専門家に相談する
午前中はなんとか乗り切った。
けれど、問題は「明日からどうするか」です。もう松尾さんはいません。来週も、来月も、誰も経理をやってくれる人はいない――。
この状況で、「とにかく誰かを雇おう」と動くのはリスクです。
なぜなら、採用には時間がかかり、教育にはさらに手間がかかるから。
🧠 まずやるべきは、「業務の分解と整理」
私たちは専門家に相談し、以下の3つの視点で“経理業務を棚卸し”しました:
① 業務の種類で分ける
記帳や仕訳処理
給与計算
請求書発行・支払業務
年末調整・法定調書作成
税理士とのやりとり
② 業務の重要度と緊急性を分ける
明日止まるとまずい業務
今月中なら間に合う業務
年1回の定型業務
③ 社内対応と外部委託で分ける
社内の人でカバー可能か?
経理代行やアウトソーシングで任せられるか?
🧩 経理代行という「応急処置+根本治療」
経理代行は「人を派遣するサービス」ではありません。
業務ごとに、専門性を持ったプロが最適な形で支援してくれる“仕組みの再設計”でもあります。
振込データだけクラウド連携で代行
記帳や帳簿整理だけスポット依頼
給与計算は社労士と連携
年末調整・源泉業務をパッケージ化
こうして「ひとりの経理」ではなく、複数の専門家によるチーム型の支援体制に移行することで、業務の安定性がぐっと高まりました。
🛠️ 採用より「仕組み」を先に整えるべき理由
採用より先にやるべきことは、以下のとおりです:
全業務の洗い出しと見える化
社内の権限・情報アクセスの再設定
定型業務の外注可能な部分の切り出し
経理業務マニュアルの再構築
「また誰かに任せる」だけでは、松尾さんと同じような問題が、いつかまた起きるかもしれない。
それを防ぐには、「人」ではなく「仕組み」を変える必要があるのです。
【15:00】専門家に連絡した。でも、今日の業務はまだ終わらない。
税理士との電話を終え、経理代行への無料相談を済ませたころには、すでに夕方が近づいていました。
でも、まだ終わりません。
📞 電話対応が止まらない
「この請求書、松尾さんに送ってたんですけど、どうすれば?」と取引先
「交通費の精算っていつまでですか?」と営業部
「振込の件で確認したいんですが」と銀行担当者
🧾 資料を探すが、どれが最新版かわからない
Dropbox、GoogleDrive、社内サーバ…資料はあるけど更新日がバラバラ
「○○さん管理」と書かれたExcelファイルが10個出てくる
勘定科目が社内用語で書かれていて、解読に時間がかかる
共有フォルダを開けば、「請求書一覧_最終.xlsx」「請求書一覧_最新.xlsx」「請求書一覧_最新版(ほんとにこれ).xlsx」「売上管理_最終_コピー.xlsx」という名のファイルが4つ並び、どれが本当に“最終”なのかは、もう松尾さんにしかわかりませんでした。
【21:00】“誰もいないオフィス”で考えたこと
ふと時計を見ると、21時を過ぎていました。
誰もいないオフィス。
昼間は電話とSlackの通知音で騒がしかった室内も、今はただ静かです。
でも、頭の中はまだ整理がついていません。
📦 書類の山と、空っぽの席
松尾さんのデスクの引き出しには、綺麗にファイリングされた領収書。
でもそれが「何に使われた経費」なのか、説明してくれる人はいない。
日報、振込一覧、試算表、申告書の控え。
情報はあるのに、“わかる人がいない”という、どうしようもない壁。
📉「業務」は回復しても、「信頼」はすぐには戻らない
社内の空気が少しピリついている。
表立って責める人はいないけれど、どこか重い沈黙が漂っていた。
役員からの「どうするつもり?」という視線に、うまく答えられない。
今日一日、懸命に動いたつもりでも、抜けた穴の大きさが、そのまま会社の“弱点”をあぶり出してしまった。
「松尾さんに聞けばいい」その一言で済んでいたことが、どれだけ多かったのか。
経理を“人に頼りすぎていたこと”が、ようやく露わになった瞬間でした。
🤖「誰か」ではなく、「仕組み」が必要だと気づく
この状況、仮に明日、新しい人を採用できたとしても、すぐには回復しない。
業務フローが見える化されていない。
権限も、知識も、分担も、共有されていない。
“人”ではなく、“仕組み”が欠けていた。
そう気づくのは、こういう夜です。
🧭 この時間が教えてくれたこと
信頼していた人がいなくなる喪失感
でも、その人に頼りすぎていたことへの反省
「何を知らないのかすら、わかっていなかった」ことへの恐怖
🌃 そして、ようやく次の一歩が見えた
今日すべては終わらなかった。でも、「どうにもならない」とは思わなかった。
経理代行との初回相談で、プロと話しながら整理できた業務の棚卸し。外に出すべき業務と、社内に残すべき業務の切り分け。そして、仕組みを“人ではなく会社の資産”として再構築するという考え方。
あの日の夜、ひとりオフィスで感じたのは、「これは終わりじゃなくて、始まりなのかもしれない」――そんな予感でした。
【あとがき】経理がいない日が教えてくれたこと
誰もが「まさか、うちが」と思っています。
でも、“まさか”は、ある日突然やってきます。
松尾さんが辞めたことは、正直ショックでした。
でもこの出来事が、私たちにとって会社の仕組みを見直すターニングポイントになったのも事実です。
経理がいなくても会社は回るように
でも、いなくなる前に動けるように
「もし○○さんがいなかったら?」という視点で、あなたの会社の経理体制、棚卸ししてみませんか?
📩 経理が突然辞めたら、まずはこちらへ
「このままじゃ、月末の支払いも、給与計算も回らないかもしれない」
そんな状況で、社長や管理部門が一人で抱え込む必要はありません。
✅ Harborsは、経理の「次の一手」が見つかる場所です。
Harborsの経理代行ステーションは、“引き継ぎゼロ”でも対応できる体制を整えた、経理のプロフェッショナルチームです。
突発的な退職による緊急対応(請求書、振込、給与など)
業務の棚卸しと再構築(業務ごとの分解と仕組み化)
顧問税理士や社労士との調整、ソフトの再設定など
「一人経理」に戻さない体制づくりのご提案
👨💼 専任担当が、社長の“隣の席”のつもりで伴走します。
Harborsでは、単なる外注ではなく、**「社内にもう一人の経理部長がいるような感覚」**で関わることを大切にしています。
初回の無料相談では、「まず、何を確認すべきか」から一緒に整理し、“いま必要な対応”と“これから整える体制”を一緒に考えます。応
経理が辞めるのは、トラブルではなく「見直すタイミング」かもしれません。
まずは状況の整理から、お気軽にご相談ください。
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