経理がすぐ辞めるのは、うちだけ?──原因と改善のヒント
- 恵 菅原
- 12 分前
- 読了時間: 10分

1. はじめに|「あれ?また辞めたの?」が当たり前になっていませんか?
経理の採用って、なぜこんなに難しいんだろう——
ようやく見つけたと思ったら、気づけばまた「退職願」が届いている。
そんな経験を重ねるうちに、「うちは経理が定着しない会社だ」と諦めモードに入っていませんか?
でも、ちょっと待ってください。
経理は「数字」という会社の心臓を扱う重要なポジション。
ここが安定しないということは、財務や経営の足元が揺らぎかねない重大な問題です。
とはいえ、「最近の若い人はすぐ辞める」と一括りにしてしまうのも危険。
実は、職場環境や業務の進め方に原因があるケースも少なくありません。
本記事では、
経理担当者がなぜすぐ辞めてしまうのか
企業側が見直すべきポイントは何か
そして、安定した経理体制を作るためにどんな選択肢があるのか
こうした点を整理しながら、現場が変わるヒントをお届けします。
2. データで見る「経理の離職率」は本当に高い?
「経理って、そもそもすぐ辞めがちな職種なんじゃないの?」
そんなふうに感じている方も多いかもしれません。
ですが、厚生労働省が公表している職種別の離職率データを見ると、
経理を含む“事務職”の離職率は、他の職種と比べて特段高いわけではありません。
たとえば、サービス業や営業職、介護職などに比べると、
事務職の離職率は**むしろ「安定している側」**に分類されることが多いのです。
つまり、「経理職=すぐ辞める仕事」という見方は早計かもしれません。
離職の背景には、「その職場だからこそ辞めた」理由がある可能性が高いのです。
この章でお伝えしたいのは、
💡「経理は続かない職種」ではなく、
🔎「続かない職場環境になっている可能性がある」という視点を持っていただくこと。
「どこもこんなもの」と思い込まずに、
まずは自社の現状に目を向けることが、改善への第一歩になります。
3. 経理がすぐ辞める“本当の理由”とは?
「うちの経理はすぐ辞めてしまう」
そんな企業に共通するのは、個人の問題ではなく、職場環境や業務設計に“辞めたくなる理由”が潜んでいることです。
経理職は、静かで淡々としたイメージがあるかもしれませんが、実際には非常に気を遣う仕事です。
日々の数値の整合性を保ち、給与・請求・税務など一つひとつの作業にミスが許されないプレッシャーがあります。
そのうえ、以下のような状況が重なると、**「ここにはもういられない」**と感じてしまうのも無理はありません。
✅ 経理が辞めたくなる“職場側の理由”リスト
引き継ぎが不十分で、入社早々「何をしていいか分からない」状態
業務範囲が不明確で、気づけば総務・庶務まで任されている
経営者・上司が数字に関心を示さず、相談してもスルーされる
「このファイルだけは◯◯さんしか触れない」など、属人化が進行している
ルールが口伝え、マニュアルは存在しない(あるけど古い)
会計ソフトが古く、アナログな処理で作業効率が悪い
月末月初は地獄。残業は当たり前、休日出勤もある
業務の重要性のわりに、社内で感謝されにくく孤独感が強い
📌 結果的に起こる「心の離職」
物理的に辞める前に、まず「心が離れている」状態が生まれます。
報告しても誰も見ていない
エラーがあっても誰も助けてくれない
「ミスしたら怒られるのに、努力しても評価されない」
こうした状態が続くと、モチベーションはどんどん削られ、やがて「もっとまともな会社に行きたい」と転職を考えるようになります。
重要なのは、「人がすぐ辞める」のではなく、
「辞めたくなるような仕組みになってしまっている」可能性に目を向けることです。
次章では、「それ、本当に本人の問題ですか?」という視点から、
会社側が見落としがちなポイントを深掘りしていきます。
4. それ、本当に“本人の問題”ですか?
経理担当が辞めてしまったとき、
「またか…」「今どきの若い子は根気がない」といった声がつい出てしまうこと、ありませんか?
でもちょっと立ち止まって考えてみてください。
「本人が悪い」という見方で終わらせてしまうと、何も改善できないまま、次の人も同じ理由で辞めていくかもしれません。
🔍 辞めた人が残していった“サイン”に気づいていますか?
たとえば、こんな兆候はなかったでしょうか?
Slackやチャットで質問しても返信がなかった
月次処理が微妙に遅れていた
会話が減っていた
会議で発言しなくなった
「大丈夫です」と言いながら、目が笑っていなかった
最近遅刻が増えていた
退職は、ある日突然の出来事のように見えて、実は心の中では何度も何度も「辞めたい」が繰り返されていた結果です。
🧠 本人の資質ではなく「仕組みの問題」かもしれない
・引き継ぎの手順が不明確
・ミスを共有しづらい雰囲気
・「1人しか全体を把握していない」属人化体制
・相談先がない孤立状態
これらはすべて、「会社の仕組み」に起因するものです。
つまり、経理が辞めた=自社の業務体制に改善点があるという可能性が極めて高いのです。
💡 離職は“責任の押し付け”ではなく、“改善のきっかけ”に
辞めた人を責めるよりも、
「なぜこの環境では続けてもらえなかったのか?」
そう問い直すことができれば、同じ過ちを繰り返さずに済みます。
離職は、会社にとってのサインです。
それに気づけるかどうかが、次の成長を分けるポイントになるのではないでしょうか。
5. 採用前に見直すべき3つのポイント
経理が定着しない原因は、職場の中だけでなく、
そもそも「採用の段階でつまずいている」ケースも少なくありません。
応募してきた人材に問題があったのではなく、
会社側の伝え方・迎え入れ方に“ズレ”があったのではないか?
ここで、一度立ち止まって見直してみましょう。
✅ ① 求人内容と実際の業務にギャップはないか?
「経理」と書かれていたけれど、実際には…
来客対応やお茶出しもあり
備品発注や郵便物の仕分けも担当
総務・庶務・庶務・雑務なんでも屋
こうした“あるある”は、求職者側からすれば「話が違う」と感じる大きなポイントです。
もちろん中小企業では「何でもやる」は当たり前かもしれませんが、
であればそれを正直に書くことが信頼につながります。
✅ ② 教育・引き継ぎの体制が整っているか?
「前任者が辞めていて誰も教えられない」
「そもそもマニュアルがない」
「経理は◯◯さんの頭の中にしかない」
──こんな状態で新人を迎えると、どんなに意欲がある人でも不安になります。
簡易マニュアルを用意する
初日〜1週間の業務予定を共有する
質問しやすい空気をつくる
ほんの少しの配慮で、離職のリスクを大きく下げることができます。
✅ ③ 経営層・管理職が「経理の仕事」を理解しているか?
「経理はうちにとって超重要な役割」
──その認識が、経営陣にどれくらい浸透しているかも、定着には大きく関わります。
数字の意味を共有する機会があるか
経理からの報告に関心を示しているか
「ありがとう」と言える文化があるか
こうした小さな積み重ねが、
経理担当者の「ここで働き続けたい」という気持ちを支えていくのです。
6. 「続く経理」を育てる職場環境とは
経理担当が辞めない職場には、共通する特徴があります。
それは、**「経理を属人化させない仕組み」と「孤立させない環境」**が整っていることです。
🧩 属人化させない=「1人で抱えさせない」体制づくり
経理が一人しかおらず、かつすべての業務を丸投げされている場合、
それはもはや「任されている」のではなく「放置されている」に近い状態です。
そうならないために、例えば以下のような工夫が有効です:
月次の流れや締切を全員で共有する(ホワイトボードでもOK)
マニュアル・ToDoリストをGoogleドキュメントなどで共用化
銀行ログインや会計ソフトのID・PWは会社管理(1人任せNG)
経理業務の一部は、外注や専門家の力を借りる
ポイントは、「この人がいなくなったら何も分からない」状態をなくすことです。
🤝 孤立させない=「会話と感謝」がある組織文化
数字を扱う経理は、どうしても**“裏方”になりがち**です。
けれど、報告しても見られない、反応がない、相談しても「よく分からないから税理士に聞いて」で終わる――
そんな日々が続けば、誰だって孤独になります。
経理が定着している会社では、たとえばこんな風土が根づいています:
数字に関心のある上司が「何かあったら相談してね」と声をかける
月末処理が終わったら「ありがとう、おつかれさま」の一言がある
業務フローが明文化されていて、他の人でもある程度理解できる状態になっている
業務だけでなく、「人」として見てもらえる環境は、離職防止にとって極めて重要です。
☑ 外部の力を借りるという選択肢も
「全部を内製でやろう」とするほど、経理担当者の負担は重くなります。
一部業務だけでも**アウトソーシング(外注)**を導入することで、
経理の負荷を減らし、会社としてのリスクも分散できます。
たとえば:
記帳代行だけ外部に出す
給与計算だけ委託する
決算期だけ専門家に頼る
こうした“部分外注”から始めることで、経理担当者も安心して業務に専念できる土壌が整います。
7. そもそも経理を「内製」にこだわる必要はある?
「経理は社内にいないと不安」
「外に出すのはなんとなく怖い」
そんな理由で、すべての経理業務を内製(自社完結)し続けている中小企業は少なくありません。
もちろん、会社の数字を社内でしっかり管理することは大切です。
しかし一方で、**“内製にこだわることで生まれるリスク”**があるのも事実です。
🔥 内製だけに頼ることのリスク
経理が辞めた瞬間、請求書も給与計算も止まる
会計ソフトのパスワードが誰にも分からない
月次の数字が把握できないまま、資金繰りが悪化
税理士とのやりとりも経理任せで、経営者が中身を把握していない
こうした状態は、経理担当の退職=業務停止リスクを意味します。
属人化が進んだままの経理体制は、会社にとって大きな脆弱性です。
🧩 外注=「全部丸投げ」ではありません
経理を外注する、と聞くと
「じゃあ会社の中で何もしなくていいの?」と不安になる方もいるかもしれません。
でも実際には、部分的な外注からスタートする企業がほとんどです。
たとえば:
自社でやる | 外注する(例) |
領収書の整理 | 記帳・仕訳入力 |
勤怠の入力 | 給与計算・明細作成 |
売上の報告 | 請求書の発行・管理 |
このように、「自社の核になる業務」は残しつつ、
「時間がかかる作業」「ミスが許されない作業」だけ外に出すことが可能です。
💡 Harborsなら“内製×外注”のベストバランスをご提案します
Harborsの「経理代行ステーション」では、
「いきなり全部お願いするのは不安…」という企業様にも、段階的な導入をご案内しています。
月次の帳簿づけだけ外注したい
決算期だけプロに頼みたい
経理が辞めた“つなぎ”として一時的に使いたい
など、目的や期間に応じて柔軟に対応可能です。
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8. まとめ:すぐ辞める原因は、見直せる“サイン”かもしれません
経理がすぐ辞めてしまう。
それは会社にとって、**ただの人手不足ではなく「見直しのタイミングを知らせるサイン」**かもしれません。
採用時にギャップがあったのではないか?
属人化や孤立が起きていなかったか?
「教えなくても分かるでしょ」という空気はなかったか?
経理を“任せる”ではなく“放置していなかったか?”
離職は、職場の“ひずみ”を見つけるヒントでもあります。
✅ 「人材が辞めない組織」には、理由がある
辞めない会社には、「辞めなくてすむ仕組み」がある。
──それは、魔法のような制度や高額な報酬ではありません。
見える化された業務フロー
感謝される文化
経理を支える社内体制と、必要に応じた外部の力
こうした地味だけど堅実な土台づくりこそが、経理定着のカギです。
🚀 一歩を踏み出すなら、いま
「次こそ続いてほしい」と思うなら、
次の人を採る前に、自社の体制・文化・仕組みを見直すことが一番の近道です。
「とはいえ、今すぐに全部変えるのは難しい」
そんなときこそ、Harborsの経理代行をご検討ください。
まずは【記帳だけ】【給与計算だけ】【つなぎとして】でもOK。
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経理が辞めた、その出来事を「ただの痛手」で終わらせるのではなく、「会社を見直すチャンス」に変えていきましょう。
その第一歩に、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。
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