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赤字でも会社がすぐ潰れないのはなぜ?資金繰り管理で何を見るべき?

22 時間前
読了時間: 12分
赤字でも会社がすぐ潰れないのはなぜ?資金繰り管理で何を見るべき?

 

赤字になったからといって、会社がその日に事業を続けられなくなるわけではありません。会社が支払いを続けられるかどうかは、損益計算書の利益だけでなく、預金残高と今後の入出金で決まります。赤字でも手元資金があり、給与・仕入・税金・借入返済などを期限どおりに支払える間は、事業を継続できます。

 

ただし、赤字が続けば通常は現金が減り、いずれ資金不足へつながります。反対に、黒字でも売掛金の回収が遅い、在庫が増えた、設備代や借入元本の支払いが重なったといった理由で現金がなくなれば、支払いができなくなることがあります。見るべきなのは「赤字か黒字か」だけではなく、「いつ、いくら入金され、いつ、いくら支払い、月末にいくら残るか」です。

 

この記事では、利益と現金の違い、赤字でもすぐに資金が尽きない理由、資金繰り管理で毎月確認したい数字、早めに借入を相談する判断材料を整理します。改善前後の例、自動化・外注できる範囲、社内に残る判断も初心者向けに解説します。

 

赤字と資金ショートは同じではない

 

赤字は、一定期間の収益より費用が多い状態です。資金ショートは、支払日に必要な現金を用意できない状態です。利益は会計上の期間損益であり、現金は実際の支払いに使える資金です。関係はありますが、同じ数字ではありません。

 

J-Net21の資金繰りに関する解説でも、利益が出ていても現金がなければ倒産する一方、赤字でも手元に現金があれば存続できることが説明されています。重要なのは、赤字なら安心という意味ではありません。支払いを続けられる時間が残っている間に、赤字の原因と資金不足の時期を把握し、改善や資金調達へ動けるということです。

 

確認する数字

何が分かるか

それだけでは分からないこと

月次損益

売上、粗利、固定費、利益の構造

入金・支払の実際の時期

預金残高

現時点で使える現金

来月以降の大口支払や回収遅れ

売掛金・買掛金

未回収の売上と未払いの仕入・経費

実際の回収日・支払日、回収可能性

在庫

販売前の商品や材料へ使った資金

いつ販売・入金できるか

借入金残高

今後返す元本の総額

毎月の返済日、金利、追加借入の可否

資金繰り表

将来の入出金と月末残高

売上見込みの確度や経営者の最終判断

 

 

損益計算書と貸借対照表、資金繰り表は役割が違います。月次損益で赤字の原因を確認し、貸借対照表で預金・売掛金・在庫・買掛金・借入金の残高を確認し、資金繰り表でそれらがいつ現金として動くかを見ます。どれか一つだけでは、会社が支払いを続けられる期間を正確に把握できません。

 

赤字でもすぐに現金がなくならない理由

 

赤字の月でも、期首に十分な預金があれば、赤字額を吸収しながら支払いを続けられます。また、会計上の費用と現金支出の時期が一致しない項目もあります。たとえば減価償却費は損益上の費用ですが、その月に同額の現金が出ていくわけではありません。

 

反対に、過去に計上した売掛金が当月に入金されれば、当月が赤字でも預金残高は増えることがあります。在庫を減らして販売・回収した場合や、金融機関から借入を受けた場合も、利益とは別に現金が増えます。ただし、借入は利益ではなく返済が必要な資金です。入金されたから業績が改善したと誤解しないようにします。

 

赤字でも現金が残る主な理由は次のとおりです。

 

  • 期首の預金や現金が十分にある

  • 過去の売掛金が回収された

  • 減価償却費など、当月の現金支出を伴わない費用がある

  • 在庫や遊休資産を減らして現金化した

  • 増資、役員借入、金融機関からの借入で資金を確保した

  • 支払条件の変更などで、支出の時期が後ろへ動いた

 

 

これらは資金を確保する要因ですが、すべてが継続的な改善とは限りません。預金の取り崩し、資産売却、借入、支払延期だけで赤字を埋め続けると、いずれ限界が来ます。資金繰り対策と同時に、売上、粗利、固定費、価格、商品構成など損益の改善も進める必要があります。

 

黒字でも資金不足になることがある

 

売上を計上した時点と、代金を受け取る時点がずれる会社では、利益が出ていても現金が不足することがあります。企業間取引では、商品やサービスを先に提供し、翌月以降に代金を回収することが珍しくありません。その間にも、仕入、人件費、外注費、税金、家賃は支払います。

 

J-Net21の黒字倒産の解説では、帳簿上は利益が出ていても、支払いに必要な資金が不足して倒産する状態を黒字倒産と説明しています。売上が急増した会社ほど、売掛金や在庫が先に増え、運転資金が必要になる場合があります。

 

資金が減りやすい代表例は次のとおりです。

 

  • 売上は増えたが、売掛金の回収が2〜3か月後になる

  • 受注増加に備えて、材料や商品在庫を先に仕入れた

  • 設備を現金で購入したが、会計上は複数年で減価償却する

  • 借入金の元本を返済した。元本返済は損益上の費用にはならない

  • 法人税、消費税、賞与などの支払いが特定の月に集中した

  • 取引先の入金遅延や貸倒れが発生した

 

 

利益が出ているから預金も増えているはずだと考えると、資金不足への対応が遅れます。月次損益の確認後に、売掛金・在庫・買掛金・設備投資・借入返済が現金をどれだけ増減させたかを確認してください。

 

資金繰り管理では、最低残高と不足する時期を見る

 

資金繰り表では、月初の現預金残高に当月の入金を足し、当月の支払いを引いて月末残高を計算します。大切なのは平均残高ではなく、予測期間の中で最も低くなる残高です。税金、賞与、仕入、返済が重なる月に不足しないかを確認します。

 

日本政策金融公庫の資金繰りに関する教材でも、資金繰り表を作ることで、資金不足が目前になってから慌てるのではなく、数か月先を見て金融機関へ早めに相談する考え方が示されています。借入は申込みと同時に必ず実行されるものではありません。資料準備、相談、確認、審査、契約に時間がかかる可能性を踏まえます。

 

毎月、少なくとも次の数字を更新します。

 

  1. 月初の全口座の現預金残高

  2. 売掛金の回収予定と、受注・売上見込みの入金予定

  3. 仕入、外注費、給与、家賃、税金、社会保険料などの支払予定

  4. 借入金の元本返済と利息の支払予定

  5. 設備投資、賞与、納税など通常月にはない大口支出

  6. 各月の月末残高と、予測期間中の最低残高

  7. 資金不足が始まる月と、対策を決める期限

 

 

資金不足を早く見つける5つの確認手順

 

 

売上見込みは、受注済み、確度の高い見込み、まだ不確かな商談を分けます。すべてを同じ確度で入金予定へ計上すると、資金残高を楽観的に見積もってしまいます。支払予定は、請求書が届いていない費用も、契約、発注、給与、税金など分かっている範囲で反映します。

 

資金繰り表の期間や更新頻度は、資金繰り表はなぜ必要?中小企業は何か月先まで見るべき?で詳しく解説しています。本記事では、赤字・黒字と現金の違いに焦点を当てます。

 

改善前後の例:赤字額だけを見ていた会社

 

月商800万円の卸売会社を仮定します。これは考え方を示す例であり、実在する会社の数値ではありません。

 

改善前は、社長が月次試算表で毎月50万円の赤字を確認し、「預金が600万円あるので、しばらく大丈夫」と考えていました。しかし、翌月には仕入代金300万円、給与200万円、借入返済50万円、消費税150万円の支払いがありました。売掛金400万円は翌々月の入金予定です。損益の赤字額だけでは、翌月末に現金がいくら残るか分かりません。

 

改善後は、全口座の残高から6か月の入出金予定を作りました。通常月の営業収支だけでなく、税金、返済、賞与、設備修理を別行で記載し、売掛金は取引先別の回収予定日に置きました。その結果、2か月後に残高が100万円を下回り、3か月後には不足する可能性が分かりました。

 

項目

改善前

改善後の例

判断材料

月次の赤字50万円と現在の預金600万円

6か月の入出金予定と各月末残高

売掛金

合計残高だけを見る

取引先別の回収日と遅延可能性を反映

大口支出

支払月になってから確認

税金・賞与・修理・返済を予定月へ反映

売上見込み

商談を一括して売上予定に含める

受注済みと未確定見込みを分ける

対応時期

預金が減ってから相談

不足予測が出た時点で原因改善と資金相談を開始

 

 

この会社では、回収条件の交渉、滞留在庫の削減、不要支出の延期を先に行い、それでも残る不足額について金融機関へ相談する準備を始めます。重要なのは「赤字だから借りる」「預金があるから待つ」と単純化せず、必要額と必要時期を資金繰り表から計算することです。

 

借入は、現金が尽きる前に相談する

 

資金不足が迫ってから相談すると、資料を整える時間が限られます。売上・利益・資金繰りが悪化した理由、改善策、必要額、返済原資を十分に説明できないまま申込むことにもなりかねません。資金繰り表で不足の可能性を見つけたら、まず顧問税理士や金融機関、支援機関へ早めに相談します。

 

ただし、借入だけで赤字の原因がなくなるわけではありません。J-Net21の資金繰り改善法では、赤字経営、回収・支払条件の悪化、過剰在庫、売掛金の貸倒れなど、資金繰りを悪化させる原因を把握し、経営全般で改善する必要性が説明されています。

 

相談前には、次の内容を一つの流れで説明できるようにします。

 

  • 現在の現預金と、いつ不足する見込みか

  • 必要な金額と、計算の根拠

  • 赤字または資金減少の主な原因

  • 回収、在庫、粗利、固定費などの改善策

  • 借入後の月末残高と返済予定

  • 返済原資となる今後の売上・利益・回収見込み

 

 

金融機関ごとに審査や必要書類は異なり、早めに相談すれば必ず借りられるわけではありません。現在の数字を隠したり、楽観的な売上だけで資金繰りを作ったりせず、事実、見込み、未確定事項を分けて提示します。具体的な準備資料は銀行融資を受ける前に、経理で何を整えておくべき?も参考にしてください。

 

どこまで自動化・外注でき、社内に何を残すか

 

資金繰り管理は、銀行明細や請求データの収集、入金・支払予定の更新、残高計算などを自動化・外注できます。一方、売上見込みの確度、支払の優先順位、借入条件、投資の実行などは社内で判断します。

 

業務

自動化・外注しやすい範囲

社内・専門家に残す役割

現預金管理

銀行明細の取得、口座別残高の集計

使用可能額、資金移動、支払口座の判断

売掛金管理

請求一覧、入金消込、未入金一覧の作成

回収見込み、督促、取引継続の判断

支払予定

請求書の一覧化、支払日・金額の登録

支払承認、優先順位、条件交渉

資金繰り表

実績取込、予定更新、複数パターン作成

売上確度、資金対策、借入希望額の決定

月次損益

記帳、残高照合、推移表の作成

赤字原因、価格・粗利・固定費の改善判断

融資相談

基礎資料と差異一覧の整理

申込、事業説明、条件・返済方針の判断

 

 

経理代行へ任せても、会社しか知らない受注状況、納品予定、回収交渉、採用・投資計画は自動では反映されません。社内の情報提供日、外注先の更新日、経営者の確認日を決め、古い見込みを残さない運用が必要です。

 

資金繰り管理を経理代行へ依頼できる範囲は、経理代行で資金繰り管理まで依頼できる?で詳しく紹介しています。

 

毎月の資金繰りチェックリスト

 

  • 全銀行口座の実残高を確認した

  • 試算表の預金残高と銀行明細を照合した

  • 売掛金を取引先別・回収日別に更新した

  • 回収遅延や貸倒れの可能性を反映した

  • 買掛金、未払金、給与、家賃の支払日を更新した

  • 税金、社会保険料、賞与、設備代など大口支出を反映した

  • 借入金の元本返済と利息を分けて反映した

  • 在庫の増減と仕入資金への影響を確認した

  • 売上見込みを受注済みと未確定に分けた

  • 予測期間中の最低残高と不足する月を確認した

  • 赤字原因と資金減少原因を分けて説明できる

  • 対策の担当者と実行期限を決めた

  • 必要に応じて税理士・金融機関・支援機関へ相談した

 

 

チェックリストは、経理担当だけで完結させないことが重要です。営業は受注・回収見込み、購買や現場は仕入・外注・在庫、経営者は投資・採用・借入の判断を持っています。月1回でも情報を同じ表へ集め、予定と実績の差を確認します。

 

よくある質問

 

赤字は何か月までなら大丈夫ですか?

 

一律に何か月までとはいえません。赤字額、期首の現預金、回収・支払条件、在庫、借入返済、大口支出、追加資金の可能性によって異なります。月次の赤字額だけで単純に割らず、実際の入出金予定から月末残高を計算してください。

 

預金残高が多ければ、資金繰り表は不要ですか?

 

現在の残高だけでは、納税、賞与、設備投資、大口仕入、返済など将来の支出を確認できません。また預金の一部が近く支払うための資金であれば、自由に使える額ではありません。残高が多いときも、最低残高と大口支出の月を確認します。

 

赤字なら、すぐ借入を申し込むべきですか?

 

赤字だけで判断せず、資金不足の時期、原因、必要額、改善策を確認します。借入が適切な場合もありますが、回収遅延、過剰在庫、低い粗利、固定費超過が続く場合は原因改善も必要です。早めに相談し、申込の可否や条件は金融機関と検討してください。

 

借入をすると赤字は解消しますか?

 

借入で現金は増えますが、売上や利益が増えるわけではありません。借入後は元本と利息の支払いが発生します。資金繰りを安定させる時間を確保し、その間に赤字原因を改善する計画が必要です。

 

減価償却費があると、赤字でも現金は減らないのですか?

 

減価償却費は当月の現金支出を伴わない費用ですが、ほかの支払や設備購入時の現金支出があります。減価償却費の分だけ必ず現金が残るとは限りません。損益から機械的に判断せず、実際の入出金を確認してください。

 

資金繰り表は会計ソフトだけで自動作成できますか?

 

過去実績や登録済みの債権債務は連携できる場合がありますが、将来の受注確度、回収遅延、納税、賞与、投資、支払交渉まですべて自動で正しく決まるわけではありません。自動集計後に、社内の予定と判断を反映します。

 

赤字額だけでなく、現金が尽きる前の期限を管理する

 

赤字でも手元資金があり、支払いを続けられる間は、会社は直ちに事業継続できなくなるわけではありません。しかし、赤字が続けば現金を消費します。預金の取り崩しや借入だけで先送りせず、月次損益で赤字の原因を、資金繰り表で不足する時期を確認することが重要です。

 

毎月見るべきなのは、現在の預金、入金予定、支払予定、返済・納税・投資などの大口支出、予測期間中の最低残高です。不足する月から逆算して、回収、在庫、支出、価格や粗利の改善を進め、それでも必要な資金は早めに相談します。

 

品川・横浜 経理代行ステーションでは、月次損益の基礎資料づくり、売掛・買掛管理、資金繰り表の更新、月次確認の役割分担を含む経理体制づくりを支援しています。赤字と現金減少の原因を整理できない、入出金予定が担当者の頭の中にある、金融機関へ相談する時期を判断したい場合は、お問い合わせページからご相談ください。

 

※本記事は2026年10月2日時点の公的機関・公式情報をもとにした一般的な解説です。資金繰り、融資、返済条件、税務・会計処理は会社の状況や金融機関・制度により異なり、融資の承認や事業継続を保証するものではありません。具体的な融資条件は金融機関、税務・会計は税理士、法務は弁護士などの専門家へご相談ください。

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