【経理が退職代行で突然辞めた】社長が今すぐやるべき7つの対処法
- 恵 菅原
- 3 日前
- 読了時間: 13分
更新日:2 日前

月曜の朝。
経理担当者が出社しておらず、社内では「体調不良かもしれない」「何かあったのでは」といった声が上がっていました。
連絡がつかないまま時間が過ぎた10時すぎ、会社の代表番号に1本の電話が入ります。
受電した社員が確認したところ、発信元は退職代行サービスを名乗る業者。
相手は、「○○(社員名)様は、本日をもって御社を退職されました。今後は本人への直接のご連絡はお控えください」と一方的に通告してきました。
それが退職の完了を知らせる唯一の通知でした。
本人からのメールや書面による退職届はなく、社内の誰も事前に知らされていませんでした。
しかも、退職したのは経理業務を担当する社員。
会計ソフトの操作、請求書の発行、給与計算、銀行の振込対応、税理士との連携など――日々の資金管理に関わる情報や業務の多くが、その社員に集中していました。
このように、退職代行を通じて事後的に退職を知らされるケースでは、引き継ぎがまったく行われていないことも珍しくありません。事業の継続に支障が出る恐れがあるため、初動対応が極めて重要になります。
1. 退職代行の利用は“特殊なケース”ではなくなった
「退職代行なんて、うちには関係ないと思っていた」
そう語る経営者の方は少なくありません。ですが現実には、退職代行を利用して会社を辞める人は、年々確実に増えています。
利用者は右肩上がり。もはや“例外”ではない
退職代行サービス「モームリ」によると、2022年〜2024年の間に15,934名が同サービスを利用し、約1割(1,466社)は“複数回”利用された企業でした。
中には1社で64回もの利用があったケースも報告されています【出典:PR TIMES】。
つまり、「うちの会社だけに起きた特殊なトラブル」ではなく、多くの企業がすでに直面している“現実的なリスク”だということです。
特に若年層の利用が多く、引き継ぎのない退職も一般化
退職代行の利用者は20代が約6割を占め、「上司に言い出せなかった」「引き止めが怖かった」という理由が多くを占めています。
その結果、業務の引き継ぎは一切行われず、退職当日に突然会社から姿を消すケースも少なくありません。
そして「経理」は最も属人化しやすい職種のひとつ
経理業務は、
会計ソフトやネットバンキングの操作
給与計算や請求書発行
税理士・社労士とのやりとりなど、「その人しか知らない」「その人にしかできない」作業が積み重なりやすい業務領域です。
そのため、突然の退職が発生すると、
「支払いが止まった」
「給与計算のやり方がわからない」
「通帳・印鑑がどこにあるか誰も知らない」
といった“業務停止”のリスクが現実のものになります。
こうした背景を踏まえたうえで、次章では「実際に経理が退職代行で辞めたとき、社長がまず確認すべきこと」を具体的に整理していきます。
2. 経理が退職代行で辞めたら、まず社長が確認すべき5つのこと
経理担当者が退職代行を利用して、事前の相談もなく突然退職した場合、最も重要なのは業務が止まらないよう、早急に現状を把握することです。
以下の5点を確認すれば、何が残されていて、どこから手をつけるべきかが見えてきます。
① 支払い・振込スケジュールは把握できているか?
まず確認すべきは、今週・今月の支払予定です。
給与振込はいつか?
請求書の支払期限は迫っていないか?
家賃やリース、税金などの引き落としは大丈夫か?
中小企業では経理1名がこうしたスケジュールを口頭や個人メモで管理していることも多く、「誰も把握していなかった」では済まないリスクがあります。
② 会計ソフトやクラウドツールにログインできるか?
freeeやマネーフォワード、弥生、TKCなどを使用していた場合、ログイン情報の所在を確認します。
ID・パスワードは共有されていたか?
管理者権限は本人だけが持っていなかったか?
二段階認証が個人スマホになっていないか?
ログインができない=現状が見えないということになり、次の手が打てなくなります。
③ 銀行口座のインターネットバンキングにアクセスできるか?
資金移動に直結するため、ここも早急に確認すべき項目です。
操作端末・トークンはどこにあるか?
振込データの作成・承認は誰が行っていたか?
金融機関への連絡体制は整理されているか?
とくに地方銀行や信用金庫のネットバンキングは個人ID型が多く、担当者退職=入金・支払い不能という事態もありえます。
④ 社内外のやり取りの属人化がないか?
税理士、社労士、銀行、リース会社など、誰と誰が連絡を取っていたか?
仕入先・外注先への支払いはどうなっているか?
請求書・領収書の処理は進んでいるか?
「●●さんしか知らない」が積み重なると、問い合わせのひとつすらできない状態に陥ります。
⑤ 現金や預金に関わる“物理的な管理物”はどこにあるか?
小口現金の保管場所と帳簿
金庫の鍵や印鑑、振込USB
通帳やキャッシュカード、印紙・切手など
これらが行方不明になると、経理だけでなく法務・契約業務にも支障をきたす可能性があります。可能であればすぐに棚卸を行い、抜け漏れを防ぎましょう。
POINT:まずは“現状把握”と“緊急対応の切り出し”を
この段階では「すぐに元通りに戻す」ことを目指すより、
何が止まりそうか
何を外注すべきか
社内でできることは何かを切り分けて、業務を止めない対応を取ることが重要です。
3. 引き継ぎなしの「一方的退職」にどう対応するか
退職代行を利用するケースでは、**原則として“会社と本人の直接連絡は禁止”**とされています。
そのため、
「引き継ぎだけでも…」
「せめて口座パスワードだけでも教えてほしい」
と願っても、連絡手段が封じられているため、現実的には不可能です。
「引き継ぎなし」は例外ではなく、“想定すべき事態”に
2020年代以降、退職代行を利用する労働者は急増しています。
弁護士が運営する正規の退職代行サービスも増え、法的トラブルを避ける形で即日退職が成立するケースも珍しくありません。
つまり今は、
「引き継ぎができない退職」=“ありえない”ではなく“よくある”という前提で考える必要があります。
🚨 よくある「経理属人化」の問題点(例)
経理資料が個人PCのローカル保存になっている
会計ソフトのパスワードが退職者しか知らない
経費精算・給与計算の操作手順が属人化している
仕入先との金額交渉や支払日が担当者だけの記憶
こうした状態で突然辞められると、**「経理業務のブラックボックス化」**が発生し、経営の透明性や継続性が一気に損なわれます。
✅ 対応の優先順位
一方的退職が発生した場合、社内では感情的な動揺も起こりがちです。しかし、経営を止めないためには冷静な判断が欠かせません。
対応の基本は以下の3ステップです:
①資金繰りを止めない 振込・給与・請求書など緊急対応の可視化
②アクセスの再構築 会計ソフト、ネットバンキング、外部連携の再設定
③代替手段の確保 業務の外注、または一時的な経理代行の導入
🧭 重要なのは「責めること」ではなく「守ること」
「退職の仕方が非常識だ」と感じるのは当然です。ですが、退職代行を使って辞める人の多くは、
精神的に追い詰められていた
引き継ぎの責任を重く感じていた
辞めたいと言い出せなかった
というケースがほとんどです。
ここで感情を向ける相手は**辞めた人ではなく、“会社を守るために何ができるか”**という視点に切り替えることが、次のアクションにつながります。
4. 社内に代わりがいないとき、何を外注すべきか
経理が突然退職し、社内に後任がいない――中小企業ではよくある状況です。
問題は、その状態でいつまで何を社内で抱え込むかです。経理業務の中には、「一時的にでも外部に任せるべきもの」と、「自社でなんとか対応できるもの」が存在します。
外注すべき経理業務と、その判断基準
● 振込・支払処理 緊急性:高|外注の優先度:★★★
→ 支払いの遅延は信用問題に直結します。即対応が必要です。
● 給与計算
緊急性:高|外注の優先度:★★★
→ 従業員の生活に影響するため、最優先で対処すべき業務です。
● 請求書の発行・管理
緊急性:中|外注の優先度:★★☆
→ 売上に直結するため、早めの復旧が望まれます。
● 経費精算処理
緊急性:中|外注の優先度:★★☆
→ 一時的な保留は可能ですが、社員の不満や混乱につながりやすい業務です。
● 会計ソフトの記帳
緊急性:低|外注の優先度:★☆☆
→ 月次・年次決算に向けて早めの整理が必要。緊急性は低めです。
● 税理士との連携業務
緊急性:中|外注の優先度:★★☆
→ 滞ると申告ミスや期限遅延につながるため、早期対応が望ましいです。
✅ 外注すべきサイン
以下のような状況に当てはまる場合、迷わず外注を検討してください。
社内に経理経験者がいない
銀行口座の操作や給与計算が“ブラックボックス化”している
社員から「誰に聞けばいいのか分からない」という声が上がっている
税理士や社労士とのやり取りが完全に属人化していた
「誰かがなんとかするだろう」という空気感になっている
⚠️ 「とりあえず様子を見る」は、リスクを先送りにしているだけ
初動が遅れると、
支払ミス
税務トラブル
社員からの不信感
取引先との信頼失墜
といったダメージがじわじわと広がります。
「今だけ外注する」「部分的にアウトソースする」といった柔軟な切り出し方でも、業務継続には大きな効果があります。
5. よくある社長の誤解と“やってはいけない対応”
経理担当が突然、退職代行を使って辞めた。
「信じられない」「非常識だ」と感じるのは当然です。
しかし、このような緊急事態においては、感情よりも冷静な判断が重要です。
ここでは、実際によく見られる対応ミスと、そのリスクについて整理します。
1)「本人に連絡して引き継ぎだけ頼もう」
退職代行を利用した時点で、本人との直接連絡は法的にも原則NGです。
業者側からも「会社からの接触はお控えください」と通告されているケースがほとんど。
ここで連絡を試みたり、他の社員を介してアプローチをかけると、
パワハラ・嫌がらせと受け取られる
SNSや第三者に暴露されるなど、リスクを悪化させる可能性があります。
2)「とりあえず他の社員で何とかするように」と丸投げする
「詳しいことはわからなくても、なんとかやっておいて」と他の社員に押し付ける対応。
一時しのぎとしては有効に見えますが、以下の問題を招きがちです:
担当者不在によるミスが増える
社内の不公平感・不満が溜まる
さらに退職者を生む「連鎖リスク」に発展する
社長自身が「何ができるのか・何は無理なのか」を判断したうえで、適切に仕分け・外注する体制が必要です。
3)「なんでこんな辞め方をするんだ」と社内で怒りをぶつける
誰かに責任を求めたくなる気持ちもありますが、感情的な発言は逆効果です。
社内の空気が重くなる
他の社員が「次は自分かも」と萎縮する
一部の社員が退職者側に共感し、社内不信につながる
経営者が冷静に対処する姿勢こそが、現場の安心感に直結します。
✅ 正しい方向性:「次に同じことが起きても困らない体制を作る」
経理が辞めたこと以上に問題なのは、「経理1人が辞めただけで会社が止まる」という状態です。この経験をきっかけに、
業務の属人化をなくす
情報や権限を“見える化”する
外部サポートを前提とした仕組みを構築する
など、**組織としての耐久性を高めていくことが本質的な解決につながります。
6. 退職代行で辞められる前に備えておくべきだったこと
今回のように「経理が突然辞めてしまった」という事態は、企業にとって一種の“事故”のように感じられるかもしれません。
しかし、多くのケースでは、その“事故”は事前に防げるものでした。
ここでは、同じ事態を二度と繰り返さないために、企業が日頃から準備しておくべきポイントを整理します。
✅ 1)会計ソフト・クラウドツールの“共有と権限管理”
ログイン情報は管理者権限含めて複数人で把握しておく
2段階認証は業務用の電話・メールアドレスを使用
退職時にすぐ権限を削除・変更できる体制にする
💡クラウド型ツールを導入していても、管理が個人任せでは意味がありません。
✅ 2)経費精算・給与計算の業務マニュアル化
「この操作は○○さんしかできない」をなくす
勤怠集計から振込データ作成まで、手順を“見える化”
社労士など外部パートナーと連携しておくとスムーズ
💡マニュアルは、引き継ぎのためだけではなく“緊急時の代替要員確保”のためにも重要です。
✅ 3)社内外の重要連絡は“担当者任せ”にしない
税理士、社労士、金融機関、主要仕入先などの連絡窓口は複数設定
重要メールや帳票類は個人アドレスではなく、共有アカウントで受信
「この件は○○さんにしか聞けない」という状態を解消しておく
💡属人化の放置は、リスクの温床になります。
✅ 4)「外注できる業務」を洗い出しておく
いざというときにすぐ相談できる経理代行・社労士の候補を確保
一部業務(記帳や請求書発行など)を平時から外注しておくのも有効
必要に応じて、外注と内製のハイブリッド体制を検討
💡**「全部自社でやる」ことがリスク**になる時代です。
✅ 5)退職フロー・業務引き継ぎの整備
退職届の提出から最終出社日、権限削除、機器返却までの社内ルールを明文化
退職意向が出た段階で、段階的な引き継ぎリストの作成を開始
「辞め方」への不安やストレスを軽減することで、退職代行を防ぐ副次効果も
💡整備することで、急な退職への耐性と社員の安心感の両方を高められます。
このように、“想定外”の事態も、仕組みと事前準備で“想定内”にすることが可能です。
属人化を前提としない経理体制づくりが、経営の安定につながります。
7. Harborsの「経理代行ステーション」なら、こんなときも安心です
「経理が突然辞めた」
「引き継ぎがなくて業務が止まっている」
「請求書も給与計算も社内でできる人がいない」
そんな状況でも、Harbors(ハーバーズ)の『経理代行ステーション』を活用すれば、最短即日で業務を再開できます。
✅ 急なトラブルにも対応できる“即戦力のチーム”
Harborsでは、経験豊富な経理スタッフがチームでサポート。
請求書発行・支払処理・給与計算・記帳代行など、実務レベルでの支援が可能です。
業務が止まっている箇所をヒアリングし、優先順位を整理
必要に応じて、社労士・税理士とも連携しながら、会社全体の流れを再構築
「まずは一部だけお願いしたい」という柔軟なご依頼にも対応
✅ 社内ルールや既存フローに合わせた“カスタム対応”
「これ、うち独自のやり方なんだけど…」という場合もご安心ください。
Harborsでは、各社固有の運用方法や会計ソフトに合わせて、御社専用の業務設計を行います。
freee、マネーフォワード、弥生など各種クラウドソフトに対応
経理業務が属人化していた場合の“整理と再構築”にも強みあり
作業報告や相談窓口も明確で、透明性ある外注体制を実現
✅ 専門家と連携した「安心の体制」
必要に応じて税理士・社労士・行政書士と連携
助成金申請や社会保険対応など、経理以外のバックオフィス業務も包括的に支援
情報共有・契約手続き・業務引き継ぎも明確な手順とスケジュールで進行
まずは無料相談から、お気軽に
「今どうすればいいか分からない」
「とにかく一度、状況を見てほしい」
そんなときは、Harborsの無料相談をご利用ください。
状況を丁寧にヒアリングし、業務の再開までに必要な工程と見積もりをスピーディにご提案します。
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